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実食

10話くらいまで更新するまでは書き溜めた分なので毎日投稿になると思います。

道中のウサギを倒し、魔石と肉を回収しつつ先へと進む。

鞄を持ってきて良かったと本当に心から思った。

そして結局30分ほどぐるぐる回っていた所、ようやく新たな発見があった。


「階段か・・・」

『まぁ下に広がってるようだし当然ね』

「じゃあ行く・・・と言いたいところだが」

『まぁそれはダメねぇ』


調査目的ならすぐにでもこの階段を下るべきではある。

だがそうもいかない事情がある。

事情と言うか単純な話なんですけどね。


「色々準備がいるか。はぁ。金掛かりそう」

『またパン屋のお手伝いね』

「めんどくせぇ」


そう。現状の装備だとあまりに心もとないという話だ。


武器はグラディスがいるからどうにでもなる。防具も同じく。

だがそれ以外の準備が何一つ出来ていない。

食料や水何かはいるだろうし、他にも色々あった方が絶対に良い。


今はそこまで本格的な調査をすることは考えてなかったので、その辺りを殆ど持っていない。

精々駅近くの自販機で買った水くらいなものだ。

これでは流石にな。


というわけで、一旦戻ることにした。

これ以上ウサギ倒しても意味無さそうだしな。


幸い帰り道は覚えているので行きに比べると短い時間で戻れた。大体10分くらい。


「うーん・・・魔力がうっすい!」

『中に比べたらそれはそうよ』

「だけどあること自体がおかしいんだよな。昨日まで無かったんだから」

『そうねぇ。意外と植物何かはすぐに影響が出てくるかもしれないわ』

「そうなのか?」

『魔力と最も相性の良いのは星そのものよ。ならその星と直接繋がっている植物が影響を受けるのは不思議な事では無いでしょう?』

「ああ。地脈とかそういう話?」

『覚えてるようで何よりだわ』


こうして偶に勉強した内容について抜き打ちで聞いてくることがあるから油断ならんよ全く。


とりあえずやる事も無いので山を下って家へと戻る。

時間は10時ちょいすぎくらい。

この時間帯だと道中でそこそこ人を見かける様に。

それでもやっぱり少ないな。電車止まってるからだろうか。

主婦の皆様方に置かれましてはいつも通りな気がしますけども。


「昼飯どうしようかね~」

『あら。良いモノなら鞄に入ってるじゃない』

「は・・・え?ウサギ肉食えってか?いきなり??」

『貴方なら大丈夫でしょう?』

「いやまぁ大丈夫だろうけどさ」


俺の肉体は当然の様に鍛錬されているので・・・まぁ一般的な鍛錬ではないが。

お陰様で内臓部分まで割と一般人と比べると性能が高い。

基本的に何喰っても腹は壊さないし、病気にかかった事だって無い。

魔力万能か?って思うだろう。違うんだなぁこれが。ぶっちゃけあまり人さまには言えないことされてるし俺。


だから未知の病原菌とかがある可能性がある殺意ウサギの肉だろうと食うことは出来る。

だが食いたくなるかは話が別だ。全く食欲がわかない。


「そもそもウサギの肉って・・・いや柔らかいんだっけか」

『レストランでも出すんでしょう?なら食べられるじゃない』

「ジビエ料理なんぞ作った事無いわい」


我が家は親の仕事の関係上、昼食は自分で用意することが多い。

なので料理自体は出来る。レパートリーだってある・・・グラディスがうるさいから。

だけど流石にジビエ料理なんぞ作ったことは無い。


「いやいっそ生姜焼きにでもするか?」

『乗り気にあって来たわね』

「まぁ魔力が込められた食い物って考えれば興味あるしな」


この時代には絶対に手に入らないと思っていた魔力アリの食べ物だ。

その点では興味はある。食って良いかどうかっていう話は・・・まぁ一旦置いておこうか。


「材料あったっけ?」

『ショウガが無いわね』

「じゃあ買いに行くか」


財布持って来ておいてよかったわ。


近所のスーパーは公民館が割と近い。

なのでちらっとあちらの様子を見ることは出来るだろう。


当然そちらまで走って行く。

スーパーの前まで来ると何か思っていたより人が少ない。


「何かあった・・・な」

『公民館が近いから、従業員を少なくしてるのかもね』

「それはありそうだな」


パートの人達も何人か顔見知りだが、その人たちがほとんどいない。

いるのは店長と正社員らしき若者の二人だけ。

それでも割と店は回っているようだ。客そのものも少ないようだ。


ショウガだけ買うのもあれなので、ついでにパックのご飯と4分の1キャベツも一緒に購入。

俺結構食べるからな。本当はご飯も家にあるのを炊いた方が良いんだけど。


「面倒だから時短で」

『コスパ悪いわねぇ』

「よく食べる様にしたのはお前だけどな」

『食べないと体作れないじゃない』

「はいはい」


ついでに野菜ジュースも買っておくか。


買い物も済ませ、チラりと公民館を確認。

人数は少ないがしっかりと警察によって封鎖されている。

中には入れそうにないな。


「魔力の漏れは?」

『全くないわね。駅前だけなのかしら』

「何でだろうねぇ」


怪しまれたくないので長居せずにすぐに帰る。

周りには野次馬いっぱいいるし、すぐに帰れば問題は無いだろう。


家に着くと少し早いと思うが調理を開始する。

ウサギ一匹分が丸々塊で出てきているのでかなり大きい。

試しに秤で計ってみる。


「1キロくらいあるじゃん500gってなんだ嘘まつか」

『本当に一匹分丸っと出てきた感じね』

「それが五個か。5キロマジ?いや食いきれるけどさ」


でもこれならキャベツいらなかったかも。


ぼやいても仕方ないので1cm程に肉を切り分けていく。

いやぁ・・・グラディスで作る包丁は切れ味が良いなぁ。


『こんな使い方する人見たこと無いわよ』

「俺以外にお前の契約者いたのか?」

『・・・』


いないってのはまぁ前から知ってる。何せ自分で言ってたからな。

お互い嘘がつけない間柄なので間違いなくいない。

その方が優越感がある。


料理に戻るか。

生姜焼きを作る時は普段は先に漬け込む方法を俺は取るのだが、今回は時間が無いのでそれは無し。

フライパンの上で調味料をぶちまけて焼いていくスタイルでいこう。


醤油、酒、みりん、ショウガはチューブで。全部目分量。個人的には醤油とショウガを多めにすると味濃い目で俺は好きだ。

冷蔵庫の中に玉ねぎが何故か大量に合ったのでいくつか頂戴しみじん切りにしておく。

肉を片栗粉をまぶしフライパンの上で焼き、軽く焼き目が付いたら上記の調味料をドーン!玉ねぎもドーン!!


水分を飛ばしつつタレが良い感じに絡んで来たら肉を引き上げる。

まだ肉は大量に残っているがこいつらはちょいと後回し。


先に味見だ。


「いただきまーす」

『どうなるのかしらね』


フォークを入れる。その時点で感じる肉の柔らかさ。

これは・・・もしかしてもしかするのか。


一口サイズになった肉をタレたっぷりと乗せて食べる。


「・・・え、普通に美味しい。やわらっかい」

『良かったわね』

「グラディスも食べるか?」

『あら良いの?ならお言葉に甘えて』


グラディスは基本的には剣ではある。

俺の中に宿っている彼女は、俺と一心同体ではあるが五感を共有しているわけではない。

なので俺が何を食べても味は分からない。


でも能力の一つを使えば具現化出来る。人間の姿を持って。


俺の体の中から青い光が出てきて、それが徐々に大きくなりつつ人の姿へと変わっていく。

完全に人の姿になると光は弱くなって、そこには絶世の美女としか言いようがない女性があらわれた。


「ふぅ。やっぱりこれ魔力食うわね」

「仕方ないさ。やってるのは人体錬成なわけだし」

「ガワだけの用意でこれは良くないわよ。どうにかならないのかしら」

「お前の能力だろうにお前が言うのか・・・」


光を反射する銀色の髪。

深くどこまでも沈んで行ってしまいそうな青い瞳。

そしてシミ一つない肌。


「・・・やっぱり綺麗だよ。お前は」

「ありだとう。それより、今はお肉が食べたいのだけれど」

「はいよ。フォークで良いか?」

「もちろん。あーん」

「はいはいあーん」


グラディスの口元に肉を刺したフォークを持っていく。

こいつ具現化しても自分で食べようとしないんだよな。

全部俺に食べさせてもらう待ちになる。

今は慣れたからまぁ良いけど、最初の時は普通に恥ずかしかったなぁ。


何せグラディスのこの人間形態は、先ほども言ったが美人なのだ。

そんな人にあーんで食べさせるんだぞ?

少年時代の俺の性癖はこいつに壊されたね。


「んっ・・・本当に美味しいわね。下手な牛肉より良いんじゃないかしら」

「脂肪分とかの違いはあるけど、柔らかいしさっぱり行ける分こっちの方が女性人気は高そうだな」

「そうね。あの程度の魔物からこんなに美味しい物が取れるなんて役得ね。定期的に狩りましょうか」

「それは賛成だな。その余裕があればだけど」

「そこはもう少し調査が必要ね。もっと頂戴」

「はいよ」


俺の方も隙を見て肉を追加で焼いて行かないとな。

この肉なら余裕で食っちゃいそうだ。

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