運命の出会い
現在進行形で投稿している【電脳狂戦士 ダンジョンに挑む】が一つの区切りを迎えたのでこれを機に元々書いていた別作品を投稿するという。
流石に毎日投稿はしません無理です。
田舎にある山というのは、都会にいる自分にとっては当時は新鮮な遊び場だった。
父親の実家がもう絵に描いた様な田舎だったのだが、これがまた大きな山を持っていたのだ。
当時五歳の俺は、初めて山に行った時それはもう喜んだそうだ。
見たことのない景色、どこまで続いているかも分からないような場所。
それらが子供だった俺の心を刺激した。
だからその山に恐れも知らずに踏み込んだのは、ある意味当然の事だった。
当然俺は道に迷う。祖父がある程度整備していたとはいえ、都会にあるようなアスファルトの道があるわけでもない。
ふと気が付いたら道を見失い・・・そのままどんどん深い場所まで行ってしまった。
だけど不思議と恐怖は無かった。
帰れないなとは思ったが、このままどこまででも行けるとすら思えたのだ。
これが子供心なのか、それとも別の何かなのか。今となっては分からない。
だが一つだけ言えることがある。
この時の俺は、間違いなく導かれていたということを。
「・・・じんじゃ?」
そうして辿り着いたのは、いつ倒壊しても可笑しくない程にボロボロになった神社だった。
鳥居は影も形も無く、本殿と思わしき建物だけがひっそりとそこにある。
精々賽銭箱がある程度。よく神社と分かったなと、今となっては驚く。
「よんでる?」
その神社から、誰かの声が聞こえた。
それは俺を呼んでいるようで、ただ泣いているようにも聞こえた。
自然と足は前へと進み始める。
ガタついてまともに開かないようになっていた扉を何とか開けて、声の方を見る。
そこにあったのは異様に綺麗な掛け軸だ。
この神社の襤褸さにしては違和感しかない。
幼い俺もそれは分かった。だが止まろうとは思わなかった。
掛け軸に触れると、それは最初から無かったかのように消えていく。
その先にはまた一つだけ部屋がある。
部屋の中には、弱弱しい蒼い光を放つ一本のナイフがあった。
ナイフはまるで実用性があるとは思えない。
儀礼用としか思えない。だが綺麗な一振りだった。
そして光に誘われるように・・・ナイフに触れた
『ミツケタ』
「え?」
次の瞬間、俺の目の前に彼女が現れたんだ。
それが・・・俺と彼女の出会いだった。
「・・・また懐かしい夢を」
『おはよう。良い夢だったみたいね?』
「一応な」
カーテンの隙間から入って来た光にまぶしさを感じつつ、ゆっくりと体を起こす。
けだるさなどは無い。ぐっすりと眠れたようだ。
『良い朝で何よりだわ』
「朝飯に寄るかな。何かあったか」
『お母さまが何か作っていたようよ』
「ハムエッグとかで良いんだけど。凝ったの作らせると悪いしな」
うちは父親母親共に働いている共働きの家庭・・・というとちょっと違うか?
近所でパン屋を営んでいるので二人ともそこで働いているのだ。
なので二人とも朝は早い。
だから俺の朝食は俺が準備すると言ってるんだけどな。
まぁそこは親心なのかもな。
「夜にはいるし気にしないんだけどな」
『親とはそういうものなんでしょうね。よく分からないけれど』
「それは俺もだよ」
彼女はまぁ人間じゃないからな。親の心ってのは分からんだろうよ。
『とりあえず窓は開けなさい?』
「はいはい・・・あ?」
『あら?』
彼女に言われた通りに窓を開けて空気の入れ替えをする。
だが窓を開けた瞬間、外の世界の違和感に気が付いた。
昨日まで存在していなかった異質な力が、空気中に漂っている。
本来今の人間が感知することのできないエネルギー・・・魔力の残滓だ。
「これは・・・寝ぼけて撒き散らしたか?」
『それは無いわね。だったらすぐに気が付くでしょう?』
「そらそうだ。つまりこれは」
『良かったわね。十年来。待ち望んだハプニングかも』
「・・・今更来られてもなぁ」
『あら枯れてるのね?まだ十代なのに』
「ご生憎様。そういう期間は卒業式で終わったんだ」
『最近のことじゃない』
男は三日もあれば成長するらしいから春休み前って考えれば十分な期間だろうよ。
だけどそうか。よりにもよって今日来るのか。
明日入学式なんだがな俺??
「来るならタイミング考えてくれっての」
『文句を言っても、現実は変わらないわよ』
「はいはい。仕方ない、行くか・・・【グラディス】」
『えぇ【真人】貴方とならどこまでも。フフッ』
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