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即興短編

どうしておなかがへるのかな

「あー、食べた、食べた!」


 自分で作るカツ丼はいくらでも大盛りにできるのがいいよね。

 お店で食べるやつの1.5倍を食べきり、食後の緑茶を喉に流し込むと、あたしは寝転んでスマホゲームを始めた。


 ゲームをしながら、食後のデザートが何か欲しくなった。

 面倒くさいけど立ち上がり、何かなかったかなと冷蔵庫の中を見ると、400ml入りのヨーグルトがあった。

 大きなスプーンでハシュハシュ食べながらゲームをやっていると、ヨーグルトをつけるパンが欲しくなった。

 食パンを一枚取ってきて、ミルクコーヒーと一緒にいただく。


 ゲームは難しくて、なかなか進めなかった。

 同じ色のブロックを三つ以上合わせて消していくやつだが、どうにもブロックの出現のしかたが意地悪いのだ。


「またずれるのかよー!」

「これインチキなんじゃね?」

「そこまでして課金させたいかー!」


 一人の部屋で、そうやって大声を出していたら、おなかがへってきた。


「1時間前にカツ丼食べたばっかりなんだけどな?」


 そう言いながらもカップ麺のこってりとんこつを食糧庫から出し、お湯を入れた。


 食べ終わると30分ほどしてまた強烈な空腹に襲われた。


「おかしい……」

 ようやく、あたしは気づいた。

「これはなんだかおかしいぞ」






「胃の中に細長いのがいますね」

 医者はそう言った。


「ほ……、細長いの……とは?」


「イタチです」

 医者は信じられないことを、あっさりと言った。

「白いイタチがあなたの体内にいて、入ってきたものを食べています。だから食べても食べてもおなかがへるんです」


 レントゲン動画を見せられた。

 確かにあたしの胃から腸の中までを、楽しそうに白いイタチの影が駆け回っている。


「こういうの、よくあるんですか?」


「初めて見ました」

 医者は即答した。


「どうすればいいんでしょう?」


「駆除しましょうか?」

 医者は事務的な言い方で、言った。

「ほっといても害は、あなたのおなかが空きまくることぐらいですが……」


 あたしはレントゲン動画をじっと見つめた。


 とても楽しそうに、白いイタチの影が、あたしの体内のあちこちを冒険していた。


 コイツがおなかにいたわけか……。どうりで最近、おなかがぽっこり膨らむ時があったわけだ。

 どうりであれだけ食べてもつまようじみたいなガリガリ体型が維持できてたわけだ。コイツがあたしの食べたものを胃の中で横取りしてたわけだ。イタチがカツ丼を食べるとは知らなかったが。


 あたしは、決意した。


「この子、飼います」


「食費がかさみますよ? いいですか?」

 医者はどうでもよさそうに、しかし聞いてくれた。


「構いません」

 あたしは強い語調で、答えた。

「愛してみせますから!」





 それから白いイタチとの共棲生活が始まった。


 あたしは食欲のバケモノとなった。いくら食べても太らないので、一日中何かを食べ続けられることが楽しかった。


 イタチには『真田さなださん』という名前をつけてあげた。フルネームは『真田さなだ夏五郎なつごろう』だ。テキトーに、頭に浮かんだ名前をつけたのだった。


「あー、豚肉とにんにくの芽の炒め物、美味しかった! もう少ししたらカレー食べよう」


 三連休が終わる。

 

 仕事が始まったらこの空腹とどう付き合っていこう……。


 仕事をしながら何かを食べ続けるわけにもいかないし……。


 ま、いいや。


 なるようになれ。




 

 

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― 新着の感想 ―
[良い点] どんだけ食べても太らない人になりたい(*´ー`*) 若い頃は胃に中にサナダムシかイタチを飼っていた気がするのに、気付いたらどっかにいなくなっちゃった(・_・;
[良い点]  花粉症の季節になったら、あの有名なセリフが言えますよ。 [一言]  実はあのセリフ1回しか言ったことがないんですけどね。
[気になる点] (•▽•;)満腹感が来た時は……
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