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魂の砂漠~聖女も悪魔も恋してる。ラバダブみたいな、熱い恋しちゃってる!~  作者: 81MONSTER
【ラスタの書】第1章
9/48

第8節【月瞳の悪魔・ラサ】



 金管楽器のような声音でハミングするリラが、月明かりに照らされて、とても綺麗に見えた。


 その場にいる全員が、呼吸も忘れてリラに魅入(みい)っていた。



「定めなんて クソ喰らえ。世界の命運 人任せ? そんなやつらに 救いは()らねぇ わたしは 一体 誰が救うの?」



 意外にも、リラがラガを始めた。それ以上に驚きなのは、その内容だった。

 ラサとは対称的な、自分に正直な歌詞(リリック)だった。

 聖女としては、最低な部類なのかもしれないが、俺がラサに抱いていた想いが重なった。



偽善(ぎぜん)()らねぇ 男も知らねぇ 二十歳のガキに 救いなんて 求めんなッ!」



 その場にいる全員が、驚いたような表情(かお)をしている。



「面喰らってる そこのおめぇら わたしの気持ちを 聞きやがれッ!」



 月瞳(ムーン・アイズ)を持つものは、二十歳の誕生日を迎えると呪いが発動して死に至る。

 だがその命と引き()えに、世界を救うとされている。



 だから皆は、彼女を聖女と(あが)めて、身勝手な『救い』を押し付けてきたのだろう。ラサはそれを見て、おのれの肌で感じても尚、聖女で()り続けていた。


 そして、今日がラサの誕生日だった。俺は悔しさと、おのれの不甲斐(ふがい)なさに歯嚙(はが)みした。



「わたしは死にたくなんてない。世界の救済なんて、どうだって良い。聖女の責務(せきむ)なんて、まっぴらごめん。だって、恋もしたことないんだよ?」



 揺れるリディムに乗せて、リラは本心を歌い続ける。



「わたしのなかには、悪魔が住みついてる。夜になると、奴が目覚める。だから、お前ら覚悟しとけッ!」



 歌い終わると、とたんに彼女は光に包まれた。


 (まばゆ)いばかりの光に一瞬、目が(くら)んだ。そして視界が回復して、俺は驚愕の波に飲み込まれた。


 そこに居たのは、リラではなくラサだった。




   ●




「ラサッ!」



 気付けば俺は、ラサに駆け寄っていた。



「無事だったんだな。良かった!」



 本当に良かった。



 リラとラサの関係性が、どういうもので()ろうが。ラサが悪魔や聖女で()ろうが、俺には関係がなかった。

 正直なところは、頭のなかはめちゃくちゃパニクってはいるが、そんなことはどうだって良い。ラサが生きてくれていて、こうやって再び出逢えただけでいまは充分だった。



「あなたは、誰ですか?」

「――え?」



 不審なものを見るような目で、こちらを(うかが)うラサからは、確かな面影(おもかげ)があった。


 人違いなどでは、決してないはずだ。



「俺のことを、(おぼ)えてないのか?」

「ごめんなさい。わたしには、記憶が無いんです」



 目を伏せるラサの表情が、哀しそうに――寂しそうに()らめいた。



「……なぁ。とりあえず、飯にしねぇか?」



 黙ってなりゆきを見守っていたハンが、そう提案してくる。

 ガゼルは腕組みしながら、何やら黙考(もっこう)している。



「みんなで火ぃ囲んで、飯でも食って。笑って語り合おうぜ。なぁ。それが、一番だと思わねぇか?」



 確かに、そうだ。



 募る想いは()ったが、全員が困惑のなかにいるんだ。

 まずは一旦、落ち着こう。



「よう、おめぇらッ!」



 ガゼルが突然、叫び出す。



「宴の時間だッ!」



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