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魂の砂漠~聖女も悪魔も恋してる。ラバダブみたいな、熱い恋しちゃってる!~  作者: 81MONSTER
【ラスタの書】第1章
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第6節【聖女リラ】



 砂の暗幕が、聖女のシルエットを包み隠していた。



 大きく振りかぶった大剣・ベルセルクから、鈍い衝撃が伝わる。トカゲの悪魔の胴体が、腹から裂けて真っ二つになる。後方でハンが悪魔のもとに飛び込んでいるのが、気配で理解(わか)った。その両の手には、おそらくナイフが握られているだろう。



「へい、ベイビー!」



 ガゼルの叫び声。



 見ると巨大な炎の(かたまり)が、悪魔に向かって飛来している。

 ガゼルは強いが、加減を知らない。だから気をつけないと、巻き()えをくらってしまう。俺は一目散に、聖女のもとに駆け抜けていった。



 ハンとガゼルが、悪魔を倒してくれるはずだ。




 ――光をくれ。




 鼓膜を震わせる(ラガ)が、心を揺さぶる。

 その澄んだ歌声は、聖女のものであった。

 だけど、その声はラサのものではなかった。



 頭の中を、大きな疑問が渦をまいていく。聖女の正体が、解らずに心が焦燥に駆られている。ラサだと思ったのに、そこに居るのはラサではなかった。




 ――光をくれ。




 聖女のラガが、光の(おび)となって悪魔を(しば)りあげていく。自由を奪われた悪魔たちが、ハンとガゼルに次々と()たれていく。


 次第に砂の暗幕が晴れて、聖女の姿が浮かび上がってくる。



「助けていただき、ありがとうございます。私の名は、リラと申します」



 甲高いその声は、ラサとはほど遠いものだった。




   ●




 すでに聖女ラサの護衛は、全滅してしまっていた。

 悪魔の群れも、こちらで殲滅(せんめつ)させた。



 残された彼女を一旦、保護することにした。



「私のなかには、悪魔が居ます」



 そういったリラの瞳には、ラサと同じ月瞳(ムーン・アイズ)が浮かび上がっていた。



「そのせいで、悪魔を呼び寄せてしまいます」



 哀しそうに眼を伏せるリラからは、聖女の面影(おもかげ)は感じられなかった。自分の()る聖女のイメージ――といっても、ラサの印象(イメージ)であるが――とは、まったくかけ離れている。



「悪魔を(はら)うためにも、世界を救うためにも、私はザイオンに向かわなければ()りません」



 自分の良くしるその場所は、コザの街の外れにあった。

 これも何かの因果なのかも、しれなかった。



「お願いです。私をザイオンまで、連れていってくれませんか?」



 確かに悪魔に狙われるなかを、護衛もつけずに向かうのは無謀(むぼう)であった。




 ――だが。




「悪いが、協力はできねぇ」



 ガゼルの言葉は、決して無情などではない。



「俺たちは只の盗賊団だが、目的がある。だから、教会のある大きな街までしか、送り届ける事はできない」


「それで、充分です。ありがとうございます!」



 リラの表情が、とたんに晴れやかになった。



「まずは、俺たちの拠点に案内してやる。詳しい話は、それからにしようか?」



 すでに日は、傾いていた。 



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