第4節【Dancing inna Time】
「わりぃな、手伝わせちまって」
ハンがココ芋の皮を、剥きながらいった。
慣れた手つきであった。その数はかなりの量があったが、物凄い速度で処理をしていた。
「いえ。気にしないでください。料理をするのは、嫌いじゃないです」
これまた大量の赤パブの身を、切り分けながら答える。
赤パブの身は柔らかくて、水分を豊富に含んでいる。砂漠の大地でも、限られた場所でしか栽培ができない物だった。
それらの食材を鍋に、次々と放り込んでいく。火をかけて、木のヘラで潰していく。ハーブやスパイスで、下味を付けていく。
「しばらく煮込んだら、終わりだ」
スパイシーな香りが、立ち昇っていく。
「さっさと朝飯を済ませて、ブルバイに行かなくちゃなんねぇ。リラには――ちょいとばかし刺激の強い場所だが、俺たちが付いてるから心配いらない」
二日酔いらしく、ハンの顔色はあまり良いとはいえなかった。
「多分、聞きたいことも一杯、あると思う。だが、それは俺達も同じだ。だから、そこは一旦、置いとこう。色々と互いに詮索するのは、ちょいとばかし違う気がする。だからそんな時は、俺達はさ――」
そういうとハンは突然、ハミングを始めた。
「一緒に飯食ってさ 笑い合ってさ 歌んだ」
ハンの歌声は、とても綺麗であった。
「Mi a selector,Mi a Deejay」
気付けば、優しいリディムが流れていた。
ハンの手には、蓄音骨が握られている。どうやらハンは、ディージェイでありながら、セレクターでもあるようだ。
「こっから始まる Dancing inna Time」
身体を揺らすハンが、笑顔を浮かべている。
「ラガが導く Hand inna Gun」
つられてわたしも、笑顔が浮かぶから不思議である。
「BUN BUN BUN!」
ゴンフィンガーを掲げて、わたしも歌い始めた。




