第3節【一緒に居たい】
「ずいぶんと、朝が早いんだね?」
そういったラスタの顔を見て、不思議と心が躍った。
まるで違う自分が、顔を出しているようだった。
「普段から、この時間にはお祈りさせられてたから……。本当は、それが物凄く、ものすごぉ~く、嫌なんだぁ!」
口から出た言葉は、本心だった。
わたしは神様が、大嫌いだ。無責任に世界の命運を押しつけて、わたしを殺そうとしているんだ。それなのに――どうして祈りを捧げなければいけないんだと、ずっと怒りを感じてたんだ。
だからいつも、お祈りの時には、心のなかで悪態ばかりをついている。だって、そうでしょ――嫌なんだもん。わたしは、自分の運命を呪い続けて、生きているんだ。
「よっぽど、嫌だったんだね」
死ぬほど、嫌だ。
「うん。皆が、わたしこのことを、聖女として強要してくるんだもん。嫌になっちゃう!」
そんなわけだから、ラサが理解らない。
もうすぐ死ぬのに、聖女の真似事をしているんだもん。本当に、イカれてるよね。
わたしと同じように、月瞳を持っているからなのか。自分が聖女であると、勘違いしているんじゃないかと思う。
悪魔のくせに、わたしよりも聖女してるラサが大嫌いだ。
「ザイオンには、俺も行くことになったから。これから、よろしくな」
意外なラスタの言葉を聞いて、飛び上がるほどに嬉しかった。
ラスタと、一緒に居たい。
だから、純粋に嬉しかった。
「ありがとうございます。……でも。本当に、良いんですか?」
ラサの姿が、頭を過った。
わたしではなくて、ラサのためを想ってのことだと感じたからだ。
「良いさ。君たちの運命は、俺も無関係じゃいられない。それに――」
続きを言いかけて、言葉をつぐんだ。
「それに?」
続きが、気になった。
ラスタが、ラサをどう思っているのかが、物凄く気になるんだ。
「いや、何でもない。朝飯を喰ったら、近くの街でDUB録りに行く」
「DUB録り……ですか?」
初めて聞く言葉だった。
「行けば解るよ。それよりも、皆を起こそう。ほっとくとこいつら、昼過ぎまで寝てるよ」
そういって、ラスタはテントへと向かった。




