第2節【死にたくない】
意識が覚醒した時、わたしは驚いていた。
目覚めると、朝日を浴びていたのだ。テントの隙間から差し込む光が、眩しいほどにわたしを照らしている。
普段なら意識の部屋で、ラサの動向が視ることができた。それなのに今回は、気付いた時にはラサと入れ替わった後なのだ。
こんなことは、初めてであった。
眠っている間に、何が起きたのかが全く解らない。そのことに対して、不安と苛立ちを覚えている自分がいる。
ラサとラスタの間に、何が起きたのかが物凄く気になった。気になって仕方がなかったんだ。
周囲を見渡すと、複数のテントが群れを成している。起きている者は、誰もいなかった。
太陽の熱が、気温を急激に上昇させている。どうしようもない不安が、わたしの胸のなかを喰い荒らしていた。居ても立っても居られなくなって、わたしは外に出ていた。まだ皆、眠っているのか、誰もいない。
自分の立ち位置が、良く解らないんだ。
どうしようもなく、色んなことが気になるんだ。
わたしはこれから、どうすれんば良いのかが解らない。
すでに二十歳の誕生日を迎えていた。もうすぐ、わたしは死ぬんだ。
聖女として生まれたというだけで、何も悪いこともしていないのに――わたしは、もうすぐ死ななくちゃいけない。
そんなの間違ってる。どうして、わたしじゃなくちゃいけないんだ。
――嫌だ。
死にたくない。
死ぬのが、恐いんだ。
どうしようもなく、恐いんだよ。
「だれか、助けてよ……」
気付けばわたしは、嗚咽を漏らしていた。
広大な砂漠が、わたしを嘲笑うように、飲み込んでいくような気がした。どうしようもなく、辛かったんだ。だけど誰も助けてくれないことは、解っているんだ。泣いていても、どうにもならないことは解ってるんだよ。
どれほどの時間、泣いていただろうか。
誰かが起きてくる気配を感じて、平静でいるように必死で取り繕った。
人影の正体が、ラスタであることに気付いて、急に心が跳ね上がった。
泣いていたことを気付かれないようにように、笑顔であることを意識して口を開いた。
「……あ、おはようございます!」
軽く笑みを称えるラスタを見て、急激に心拍が跳ね上がった。




