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魂の砂漠~聖女も悪魔も恋してる。ラバダブみたいな、熱い恋しちゃってる!~  作者: 81MONSTER
【ラスタの書】第1章
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第3節【団長ガゼル】



「お前等、元気にしてるかぁ~~~~っ?」



 めちゃくちゃでかい声で、ガゼルが皆に問いかける。


 団長であるガゼルは、偵察に出ると言って出ていった。三日ぶりの帰還(きかん)である。



 けたたましいほどに大きな声と、大雑把(おおざっぱ)な性格をしている。ハンとは対照的な大男で、これまた筋肉むき出しのマッチョマンである。いかつい顔に、鋭い三白眼(さんぱくがん)がいかにもな雰囲気を(かも)し出してはいるが、優しく繊細(ナイーブ)な心を持っている。



 涙もろくて、感情的。話はおもろくて、情熱的。そんな熱くて暑苦しいのが、ガゼルという男である。




「俺が居なくて、寂しくなかったかぁ~~~~っ?」



 誰も答えないし、(こた)えない。


 またいつものやつが始まったぐらいにしか、思わなかった。



「とっておきの話を仕入れてきたってのに、冷てぇやつらだな……」



 ほんの少しだけ、へこんでいるようだった。



「明日の朝、この道を聖女の一行が通るってぇ話しなんだが、誰も興味ねぇんだな?」



 ドヤ顔のガゼルの言葉に、皆が息を()むのがわかった。



「旦那、今の話しは本当なのか?」


「さぁねぇ……」



 ()ねた様子のガゼルが、とたんに(しぶ)りだした。



「情報の出所は、どこなんだい?」


「おめぇら、俺の話に興味ないんじゃなかったっけ?」



 そっぽを向くガゼルは正直、めんどくさいやつだ。



「旦那……」



 気づくと俺は、ガゼルの目の前にいた。


 きっと怒ったような、真剣な表情(かお)をしていたんだと思う。ガゼルの顔も、少しばかり強張(こわば)っていた。



「教えてくれ。その話は、本当なのか?」



 まっすぐに、ガゼルの眼を見据える。

 ガゼルは確かに、聖女と言った。もしかしたら、俺を救った少女に()えるかもしれない。



 真面目な顔をしたガゼルからは、感情までは読み取れない。だけど、それはほんの一瞬のことであった。すぐに表情を崩して、ため息をついた。

 優しい眼差(まなざ)しで、穏やかな声で応えてくれた。



「そんな眼で見られちまったら、教えねぇ訳にはいかねぇな」



 シガーと呼ばれる筒状(つつじょう)のものを取り出すと、その根元を(くわ)えた。魔法(マジカル)で生み出した炎の指先で、先端をゆっくりと(あぶ)る。

 ガゼルの口から吐き出される煙りが、緩やかに風に流されていく。

 この場所は、砂漠の真っ只中に位置している。



 人々は河の近くに、拠点をおいて生活を送っている。雨季(うき)になると河となるが、乾季(かんき)のあいだは水が干上がってワジとなる。

 なので必然的に、ワジを辿ると街に行き着く。

 俺たちは常に、ワジを拠点(ベースキャンプ)にしている。



「南の方の街で、聖教団の一行が話しているのを聞いたんだ」



 酒を一息に飲み干すと、ガゼルは後を続けた。



「やつらの中に、フードを目深(まぶか)(かぶ)ったやつが混じってた。体格からして、女だと思うが……そいつが、どうやら聖女らしい。大っぴらには言わないが、『聖杯』がどうとか言ってた気がする」



 信憑性(しんぴょうせい)のほどはどうか知らないが、ガゼルは噓をつくような男じゃない。


 その場にいる全員が、固唾(かたず)を飲みながらガゼルの話しに聞き入っている。



「別に聖教団に悪さをするつもりはねぇが。面白そうだから、皆でこっそり見学してみねぇかと思ってな」



 子供みたいな発想だったが、大いに賛成だった。

 もしも、その話が本当だったら聖女――ラサに逢えるかもしれない。

 自然と高鳴る鼓動を、抑える事ができなくなっていた。



 とてもじゃないが、正常じゃいられねぇ。



 ――逢いたい。



 ラサへの想いが、(たか)る感情が、くすぶり続けていた心に再び火をつけていた。



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