第8節【DUB録りに行こう】
朝早くに目が醒めると、リラが目覚めていた。
「……あ、おはようございます!」
既に日が昇り始めているので、気温は急激に上昇している。
「ずいぶんと、朝が早いんだね?」
まだ皆、夢のなかにいた。
「普段から、この時間にはお祈りさせられてたから……。本当は、それが物凄く、ものすごぉ~く、嫌なんだぁ!」
そう言って笑う彼女が、可愛らしかった。
ラサとは対照的な笑顔が、そこには咲いていた。
「よっぽど、嫌だったんだね」
笑顔を返して、応えた。
「うん。皆が、わたしこのことを、聖女として強要してくるんだもん。嫌になっちゃう!」
それについては、同感だ。
月瞳を持っているから、聖女として生きなきゃいけないのは、はっきり言っておかしかった。
裏を返せば、聖女として死ねって言っているようなものだ。そんなの納得できやしない。リラもラサも、俺にとっては一人の女の子だ。死なせたくはない。
「ザイオンには、俺も行くことになったから。これから、よろしくな」
俺の言葉を聞いて、意外そうな顔をしている。
「ありがとうございます。……でも。本当に、良いんですか?」
「良いさ。君たちの運命は、俺も無関係じゃいられない。それに――」
続きを言いかけて、言葉をつぐんだ。
「それに?」
「いや、何でもない。朝飯を喰ったら、近くの街でDUB録りに行く」
「DUB録り……ですか?」
リラは、良く解っていないようだった。
ラガには、DUBと言う概念が存在する。
オリジナルの曲を、本人が別のリディムに乗せて歌うことをいう。それ専用の歌詞に作り変えて、歌うのだ。
【ラガの魔法】のラガを、蓄音骨に乗せてベルセルクで行使する。そうすることで、これからの戦闘を優位に運ぶことができるだろう。
「行けば解るよ。それよりも、皆を起こそう。ほっとくとこいつら、昼過ぎまで寝てるよ」
皆、夜更かしが、大好きだからな。ひどい時は明け方まで、どんちゃん騒ぎをしている。まぁ、俺も人のことは言えないが、流石に昨夜は早めに寝た。
これ以上、情けない真似はできねぇ。もう、誰かに護られるのは御免なんだ。
今度こそ、ラサを守護るって誓ったんだ。
死んでも果たしてみせる。




