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魂の砂漠~聖女も悪魔も恋してる。ラバダブみたいな、熱い恋しちゃってる!~  作者: 81MONSTER
【ラスタの書】第2章
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第5節【ラスタの過去】



 (かつ)て俺には、二人の幼馴染がいた。


 一人はアスクレピオスだ。身寄りのない俺達は、兄弟のように育った。


 もう一人は、アイリという名の女の子だ。子供の頃から、三人で協力し合いながら生きてきた。



 やがて大人になるに連れて、俺はアイリに惹かれていったんだ。ずっと一緒に居たから、初めの内は自分の感情に戸惑いもした。だけど気持ちを打ち明けた時、アイリも同じ気持ちだと知って、心の底から嬉しかった。



 最初の内は、俺達は上手くやれていたと思う。二人の関係が、何処(どこ)で崩れたのかは解らない。



 在る雨の夜。アイリとアスクレピオスの情事を見てから、俺達の関係は劣悪なものとなったんだ。そして俺は、アスクレピオスの裏切りで生死の境を彷徨(さまよ)うことになる。そんななかで、ラサに出逢(であ)った。



 ――アスクレピオスだけは、絶対に(ゆる)せなかった。



 気付けば封印していた筈の魔力を、怒りに任せて開放していた。リデルが死にざまに、俺に託した力を行使(つか)おうとしているのだ。


 今の俺だと、この力を扱えるのは十秒ほどしかない。それ以上を超えると、自身の魔力に耐え切れずに灰になってしまう。



「お前だけは、絶対に赦せねぇッ!」



 アイリの哀しそうな顔が、脳裏を掠めている。



「ラスタ、落ち着いて下さい!」



 ラサの声が聞こえてきたが、力を振るうことを止めれなかった。怒りが、そうさせたんだ。


 アスクレピオスが同じように、湾刀(ダーブ)を振るっている。手に伝わる鈍い衝撃が、アスクレピオスの実力を教えてくれている。


 何故、これほどの力を有しているのかは解らないが、ここで止めなければいけない気がした。



「聖女の力は、お前には過ぎた物だ。アイリの時みたいに、俺が貰ってやるよッ!」



 安い挑発であった。


 安い挑発であったが、既に俺の怒りはピークに達していた。だから、冷静な判断が出来ていなかったんだ。



「それ以上は駄目。その力はこれ以上、使わないで下さい!」



 俺とアスクレピオスの間に割って入るラサの瞳に、月瞳(ムーン・アイズ)が浮かび上がっていた。


 膨大な魔力が膨れ上がるのを、(つたな)いながらも感じていた。


 砂嵐でラサを見失った五年前の後悔が、胸裏を不安と共に埋めていくのが解った。もうこれ以上、過ちを繰り返したくはなかった。



 ――後、三秒。



 炎を剣先に集中させて、僅かな間隙(かんげき)に向かって振り(かざ)す。


 アスクレピオスの腹を裂いて、炎がうなりを上げていた。



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