第4節【アスクレピオスの襲来】
ベースキャンプから、ワジに沿って歩いていた。
ラサの歩幅に合わせながら、そっとラサを見ると目が合った。
「何だか、変な感じですね」
恥ずかしそうに笑いながら、ラサは立ち止った。
遠くに喧騒を感じながら、向き合うとラサが微笑を浮かべている。月明かりに照らされた瞳の奥には、月瞳が浮かんでいる。
――月瞳を持つものは、二十歳を迎えると世界の救済と共に、命を失うと言われている。
絶対にラサを、死なせはしない。
幾度となく誓った想いをいま一度、心のなかで反芻する。
「誕生日、おめでとう。皮肉じゃなくて、心から祝わせて欲しいんだ」
ラサが聖女であろうが、悪魔であろうが、俺には関係ない。
ただ好きな女の子を、護りたいだけだ。
俺は彼女に、救われた。命だけじゃない。絶望の闇に、光を与えてくれたんだ。
ラサのためなら、俺はいくらでも強くなれる。
「ありがとう、ラスタ。笑わないで、聞いてくれますか?」
何処か寂しそうに笑うラサを見て、無性に切ない気持ちが込み上げた。
「ずっと、夢を見てたんです。同じ夢のなかに、ずっと貴方を感じていました。今日、ラスタに出逢えて、それが確信になりました」
そこには、五年前から変わらないラサがいた。
まっすぐで、不思議な光を内に秘める彼女は、俺の知っているラサだった。
記憶を失っても尚、彼女は変わっていなかった。
――折角、二人で話せたのに、野暮な輩が現れた。
闇の隙間から、悪魔が姿を現した。一、二、三……と、次から次へと現れて来やがる。
「バビロン野郎は お呼びじゃねぇぜ SOUNDBWOYは引っ込んでな ぶっ飛んで Bomb Bomb de FIRE」
【ラガの魔法】で生み出した火炎の玉に、数体の悪魔が吹き飛んでいった。
この程度の数なら、そう時間も掛からないだろう。
腰に提げた湾刀を引き抜いて、悪魔に斬りかかる。
「久しぶりだな、ラスタぁッ!」
不意に掛けられた声に、憎悪の記憶が蘇る。
この声の主を俺は一生、赦すことは出来ない。かつて俺から、大切なものを奪った男だ。この男の裏切りは、絶対に赦さない。
殺意の籠った斬撃を、湾刀で受ける。
「ぶっ殺してやるよ、アスクレピオスッ!」
叫びと共に、怒りが噴出した。
闇夜を照らすように、俺は全身に炎を宿した。
《SOUNDBWOY》ソンボイ
ひよっこの意




