第2節【Dance inna moon】
ずっと、ラサを探していたんだ。
自分の不甲斐なさを、毎晩のように悔いていた。だからこそ、俺は強くなろうとしていた。ずっと、強さを求めている。
――ずっとラサを、求めていたんだ。逢いたかった。
五年間もの年月を、俺は彷徨い続けていた。何処へ行こうとも、ラサを探し求めていた。ようやく再会できた今日――ラサは記憶を失っていた。俺のことを、微塵も憶えていなかった。
確かにショックだったが、それ以上に俺は困惑していた。リラの存在も驚きだったし、何よりも残された時間が僅かしかない。どうしようもなく、焦っている自分がいる。
そんな中で、ラサの歌声が聴こえてきたのだ。
「Dance inna moon 月明かりに浮かぶ声に 私の心は踊るの」
優しい弦楽器の音が、ラサの美しい声に触れている。
柔らかなリディムが、ゆっくりと月を駆けている。心がどうにも、騒めいている。
「Dance inna moon 仄かに香る風に 貴方の面影を感じているの」
ラサの視線と交わり、心が揺れるのを、慥かに感じていた。
打楽器の力強いテンポが、ラサの輪郭を浮かび上がらせていくようだった。
「ねぇ 月が私を見つめているの」
どうしようもなく、ラサが気になって仕方がない。
「ねぇ 私の心はどこを見ているの?」
どうしようもなく、ラサを求めているんだ。
「解らないの」
おぼろげな瞳の奥に、確かな光を感じていた。
「解らない――解らないから 私は歌うんだ」
――凛。と、透き通った力強いラサのハミングが、月のように夜を照らしていく。
ラサの声に呼応するように、皆が楽器を演奏していく。弦楽器や金管楽器の音が、絡まり合いながら小気味の良いリディムを紡ぎ出していく。
「Mi luv yu, Pon de riddim inna dancing to Night 闇を纏った ONE Hand GUN」
ゴンフィンガーを掲げて、ラサは愉しそうに笑った。
「SHATTA TA TA 撃ち鳴らす Bombo claat!」
踊りながら歌うラサが、とても楽しそうだった。
「COME DOWNに乗っかるこのフロー 皆で乗っかれ Rub-a-dab TIME」
ラガが皆を一つに繋げるんだ。
「ONE WAY! ONE WAY! ONE WAY!」
バイブス野郎のガゼルが、最初に乗っかってきた。
月夜のダンスホールの中、ラバダブが始まったんだ。




