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魂の砂漠~聖女も悪魔も恋してる。ラバダブみたいな、熱い恋しちゃってる!~  作者: 81MONSTER
【ラスタの書】第2章
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第1節【月光蝶】



 喧騒がゆっくりと、炎に照らされている。皆が興味深そうに、ラサを見ている。


 ――気になって、仕方がないんだ。



 砂蟲(サンドワーム)の肉を炙りながら、遠目にラサを眺めている。砂漠においてタンパク質は、貴重なエネルギー源であった。砂漠には様々な生物がいたが、容易には捉えられない。中でも、食べられる生物の獲得は極めて難しいんだ。


 砂蟲(サンドワーム)の肉は硬くて、砂っぽくて食べるには特殊な加工が必要だった。だけど幼虫は、驚くほどに柔らくて甘みがあるのだ。先日の狩猟では、三頭の幼虫を仕留めることができた。



 頭から臀部(でんぶ)を串刺しにして、大きな火で回しながら炙り焼きにすると絶品だ。



「あの()が、ラスタの惚れた女か?」



 ハンが茶化すように、問い掛ける。



「そうだよ」



 真顔で応えると、ほんの少しだけ驚いた顔をしてから、ハンが笑った。



「愛に満ち溢れてて、良いねぇ。一途って奴だ」



 拳を突き出すハンに、拳を重ねる。



「――あ、俺と一緒だ!」

「バカいうな。女ったらしのハンって言えば、皆が知ってるぜ?」



 互いに、笑みを浮かべている。 



「一緒に、ザイオンに行くんだろ?」

「あぁ。もうすぐ、お別れになっちまうな」


 ハンやガゼル達には、本当に感謝している。だけど、俺の命はラサを救うためにある。




 ――護りたいんだ。


 命に代えてでも、俺はラサを救いたい。




「アンタにも、譲れないもんぐらい在るだろう?」

「そうだな。酒と女だけは、誰にも譲れねぇなぁ!」



 又、笑いながら茶化すハンを見て、笑みを返す。


 すぐそこで、皆が馬鹿笑いを上げている。


 ラサも何だか、楽しそうだった。



 ――月光蝶って、知ってるかい?



 初めて()った日、ハンが俺に言ったことを思い出していた。この世には、どんな病でも治せる薬があるらしい。不意に――あの夜の月が、ラサと重なった。


 柔らかな。そして、美しくて優しい声が、緩やかに流れてきた。


 ラサの歌声が、とても綺麗だった。



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