第5節【Rub-a-dab PART2】
「お姉さん、名前は? アタシはエミリア MIC SONG なHEART 沸かすから 憶えておいてね Give me FLOW」
問答無用な問答をこめて、エミリアがラガをやる。
間髪入れずに、わたしは応えていた。
「〝R〟〝I〟〝R〟〝A〟 Mi Name〝RIRA〟 Ting-A-Ring a La-La-La エミリアとのSession 刻むぜ Mi SOUL」
エミリアの肩をとって、更に続ける。
「Yu love di beautiful RIRAが歌えば――」
わたしの意図に気付いたのか、エミリアが後を歌い始める。
「Yu love di beautiful わたしのこの愛が――」
ゆっくりと呼吸を合わせて、併せていく。
『Yu love di beautiful 重なるこの声が この時間と共に溶けていく』
それは、45のラガだった。わたしとエミリアの声が重なった。
――と、不意に。
エミリアが歌い始める。
「始まりを告げる PARTYはLOVE 頭 身体 揺らしながら ぶっ飛んで NOW でも このまんまじゃ なんだか足りねぇ それをRIRAが埋める」
唐突に振ってくるから、降ってきた。
「愛がなくちゃ なんにも救われねぇ けど それだけじゃ なんにも生まれねぇ から RIRAが歌う 愛を孕んだ 救いのラガ」
ゆっくりと、音とともに時間が――夜が、溶けて解けていく。
「Hand inna Pocket 詰め込んだ バイブスが 音を立てて NOW 弾けて Fry to di yu go」
わたしのラガに併せて、エミリアが踊りながら歌う。
「だから エミリアは歌う RIRAとのLIVE 二度とねぇTIME 織り込んだRHYME」
この時間が、とんでもなく楽しかった。
「お利口だ LOVE くれたエミリアに 愛を渡す 混ぜ込んだJAM 塗り込んだ GUN」
ゴンフィンガーを、掲げて笑う。
わたしが歌えば、エミリアが応えてくれる。
エミリアが歌えば、わたしが笑顔になれた。
ずっと、この時間に浸っていたかった。
夜は嫌いだったが、朝なんてきて欲しくなかった。
朝になれば、わたしは旅立たなければいけない。
聖女に戻らなければならない。
そんなのは、御免なんだ。
わたしは、聖女なんかになりたくない。
明日の朝、わたしは巡礼の旅に出る。
あらかじめ、決められていたことだった。
二十歳の誕生日を迎えると、わたしの瞳に宿る月瞳の呪いが時を刻み始める。
瞳のなかの月が、やがて満ちて、満月から新月へと変わる。そうなるまでに、聖地に聖杯を捧げなければ世界は滅びると言われている。それができるのは、聖女で在るわたししか居ないらしい。
――だから、どうした。
そう言ってやりたかった。
どうして、わたしが世界を救ってやらなければいけないんだ。
マジで、ふざけんな。




