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TS少女は逃げ惑う  作者: 海夜
1章 ふしぎの世界のTS少女
3/14

3.冷静に。着実に。

 次に目を覚ました僕は前述の通り、状況の整理から始めることにした。とはいえ、未熟な脳に長続きしない意識、もちろんスマホやメモ帳等の記録媒体などを乳児が持っているはずもない。そういうわけで、いくら中身が大学生と言えどやれることには限りがあった。


(今の状況。中世ヨーロッパ風味の部屋。廊下の外も似た雰囲気。1日の長さは体感的には地球と同程度。要検証だが多少のズレは想定内。人間関係。両親だと思われる若い夫婦、父(仮)と一緒にいる初老の男性とメイドらしき女性10人以上。外には男性と思われる気配も。父と母。私的にはめちゃくちゃかっこいい&めちゃくちゃ美人。「君に似て〜」等の発言から美醜感覚は日本と同程度?世辞の可能性、またこの家が特殊であるという可能性を考えると言い切るのは不安か。要検証。男女の認識。既知のものと相違ないと考えられる。ただし中世ヨーロッパ風の世界観にしては緩いような?要検証。魔法関係。あった。やばい。要検証。要検証!)


 そう。魔法。あった。魔法!あった!

 僕の世話係のメイドさんを見ていたとき突然コップに向かって手を翳した、と思ったら彼女の気配が揺らいだ、と思ったらどこからともなく水が出てきたのだ!

 色々あってやっぱりちょっと落ち込み気味だった僕も流石にテンションが上がった。当たり前だ。魔法だぞ。TS転生拗らせ厨二美少女(予定)が、魔法でテンション上がらない訳無いだろうが!


 そのテンションのままに奇声を上げつつ、1秒足りとも見逃さぬよう刮目する。奇声程度問題ない。赤ちゃんだもの。

 そして注意深く観察して分かってきたことがある。目が見えなくても認識できていた「人の気配」、あくまで厨二病の妄想紛いの推測だが今まで感じていたこれは、人の魔力だ。現に今、魔法らしき何かを使ったメイドの気配は少しだが弱くなっているように感じられる。というかこの能力って結構すごいんじゃ?いや、案外みんなできたりしてね。要検証。


 そして超重要事項。

 今まで他人の気配にばかり気を取られていたが、その気配はちゃんと僕にもあった。それもしっかり。がっつり。これがどういうものなのか、はっきりしたことはわからないが、仮に。仮に魔法を使うことに関わるものなのだとしたら。


 (僕って…… 天 才 なのでは〜?)


 妄想という名の虚無の平野に、魔法という夢が響き渡る。

 美少女ヒロインとの鮮烈な恋愛への未練は未だに根強い。でも、魔法という名の壮大なる希望があればこの世界をなんとか生きていける、そんな気がした。

 自由に。楽しく───



 あっ



 (でもちょっと冷静になった方がいいかもな……)

 怯えた表情のメイドさんを見て少し冷静になった。

 まだ座っていない首を極限まで回し、奇声を上げつつ魔法を凝視する新生児。割とホラーである。ごめんね。


 (冷静に。でも着実に。)

 そんなちょっとした決意を固めながら、僕は再び眠りという名の海の底に沈んで行くのであった───。

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