【2】人間の街へ
「野郎、俺の目を潰しやがった」
カラスは叫んだ。ギイと呼ばれる彼は、痛みに悶ながら草の上で暴れていた。
「隊長、大丈夫でしょうか」
ギイの子分が近寄ったが、ギイは子分を振り払い、「俺の近くに寄るな!」と叫ぶ。騒ぎを聞きつけた自然派のカラスたちがざっと二十匹ほど近くに降りてきた。皆心配そうにギイを見ている。
「お前ら、さっきのカラスの名を知るものは居るか!」
カラスたちはお互いを見るが、一羽も名乗りを上げるものはいなかった。
「クソ、流石に無害派と交流を持ってるやつはいないか……」
「隊長、やつは人間街の方へ向かったと思われます」
「なんだ、貴様。名乗れ」
「ギギと申します」
「そうか、人間街か。わかった、お前らついてこい、俺の目を潰したクソガラスを見つけるぞ!」
ギイが囃し立てると、皆雄叫びを上げた。
ガーとカー、そしてクワは飛び続けた。日が暮れるに連れ、徐々に道路沿いには家が増え始め、そしてついにビルの並ぶ人間街へとたどり着いた。もう夜更けだというのに、カラスが飛んでおり、ガーたちは呆気に取られていた。
クワは知り合いであるケイを探しにそのカラスたちに居場所を聞きに行った。少し話した後、クワは戻ってきて「ケイの居場所がわかった」と言った。ガーとカーは街に圧倒されながらも、クワについていった。
近くの公園にある木のてっぺんにケイは巣を構えているそうだった。ガーたちはしばらく飛んでいると、それらしき木を見つけたので、近くの枝に止まって様子を伺った。クワが巣に近寄っていく。
「もしもし、ケイさんの巣でしょうか?」
「やあ、久しぶりじゃないかクワ。とうとう人間派になる決心がついたかい」
「ええ、後、ご迷惑でなければ仲間がおりまして。古い友人なのですが」
ガーとカーは静かにケイを見つめた。ケイは目を細め笑った。
「構わないさ。とりあえず近くにおいで、お二匹さん」
ガーとカーは言われたとおり、巣の隣まで跳ねて行った。
「可愛い子だね、何歳だい?」
「3ヶ月です」
「そうかい、面倒見てあげてるんだね。とりあえずこれを食べさせてあげな」
そう言って、ケイはミミズとバナナの皮を巣から差し出した。二人はまる一日何も食べていなない空腹からか、食事に飛びついた。
「ずいぶん食べてなかったみたいだね」
「彼らもそうですが、山の方ではもう滅多に木の実が見つからず、自然派も来たもんでどうしようもないんです」
「自然派のやつら、とうとう山へまで来たかい」
「はい、それも大勢で。どうやら組織を作って狩りを行うようです」
「知らないうちに変になったもんだねえ、まるで人間のマネごとみたいだ」
ガーとカーが食事を食べている間、クワとケイは思い出話をしていた。どうやらクワは昔人間街に住んでいたことがあったようで、それ故にケイという人間派の友達がいるようだった。ガーは二人の話を聞きつつも、カーが喉詰まらせたりしないよう注意深く見守っていた。
「とりあえず少し降りたところに空いている巣があるから、今日はそこで寝な。明日は食事のとり方を教えてあげるよ」
ガーたちはケイにお礼をし、各々見つけた巣に腰をおろした。ガーとカーはまた体を密着させ、眠りについた。
読み返したら1話があらすじみたいな書き方になっていたので、説明的な文章から描写的な文章に少し改善してみました。そしたら分量が増えたので、全4話は嘘になるかもしれません。