第十一話 異世界と修行と迫る幹部
「修行しないといけないと思う」
エティオンの事件から二日後、いきなりの言葉に二人はポカンとする。
「だって剣技が上手くなればクエストの効率も上がるし、魔王軍幹部にだって少しは対抗出来るかもだろ?」
剣技が上手くなった程度で、アイツに勝てるとは思わないけど…。
俺は剣の振り方をバイエルに教わったがあくまでそれは初歩的なことだ。もっと異世界にあるソードスキルだの剣の舞だのを使いたい。
「だからさ、この近くに修行にうってつけの場所とかない?」
「うーん……修行かー。あ!この街の近くに古い村があるんだけど、その村で魔法を使った剣技を教えてくれるらしいぜ?今はもうそんなに有名じゃないけど…」
流石は盗賊。色々な所を回っているのかこの国に詳しい。
俺が世間知らずなだけか………?
「確かに修行は大事ですし、たまにはちょっと遠出するのも良いかもしれません。お兄様、どうしますか?」
「そういうのを待ってた。早速明日早く起きて行くか!」
「「やったー!」」
おい、遠足じゃないぞ。
それぞれ自分の部屋に戻り支度始める。
「一泊じゃすまなそうだな…。てか魔法の剣技とかまさに異世界!まさにRPG!」
「家来無しで仲間との初めての遠出……楽しみ過ぎて眠れません!」
「村がピンチだと良いなー。そしたら助けたお礼にお宝貰えるし!ピンチ求む!」
翌日
「村の場所は覚えたし、そろそろ行くぞ」
「はぁーい…んー楽しみです」
ラフィネ…ちゃんと寝れてないな。
「ふぁーあ……もう行くの?早くない?もう少し寝かせてよ…」
お前もか!
古い村とはいっても道は馬車が通る為かしっかり整備されていて、特にモンスターも出ずに二時間ほどで着いてしまった。
二時間もかなり長いけど……。
村に着いたので早速魔法の剣技とやらを教えてもらう。
「最近は魔法を使ったの剣技なんて教わる人も少なくての、ヘイトン村になんかは誰も来ないと思っていたが、まさか来てくれる人がいるとは……このオールド、精一杯お教えいたしますぞ」
では早速教えて下さい!
「魔法を使った剣技と言うのは、火・水・風・雷・氷・光、六つの属性の魔法の中から一つを魔力を少し使って剣に流し込む。これをマジックシェードと言う。昔は良く使われていたが、魔法なんていう強くてカッコイイのができればな、覚える人も少なくなる。今ではこの国に二十人もと思うくらいじゃ。して、おぬしらはどのような魔法を覚えているのか?今言った属性の魔法を習得しとらんとマジックシェードは使えんぞ?」
俺は光以外の属性の初級魔法は全部覚えたから問題ない。ラフィネは光属性。ルリテは闇…あ!
「あたし闇魔法しか覚えてないから無理じゃん!」
ガッカリしたルリテは短剣の素振りを始めた。
「じゃ、じゃあさっそく始めるとしようか…。マジックシェードとは少し魔力を使って手から魔法を流す。金属などでもできるが基本は剣に流して使う。火の魔法を剣に流して敵を切れば敵が燃える。風は切れ味が上がり氷なら凍る。そんな感じじゃ」
か、かっこええ!是非教えて下さい!
しかし修行はとてつもなく酷く辛いものだった。
マジックシェードを使えないルリテも入れて剣の素振りを一時間以上。魔力が無くなり倒れるまで剣に魔力を流す練習。一番キツイのは剣を使った戦闘練習。そもそもの戦闘力を上げるためにオリの中に入れられてゴブリンと戦わさせられる。
最初は一体二体位だったけど最近じゃ五、六体。辛いけどラフィネも俺もルリテも、強くなっているのが段々と実感できるようになっていった。
修行をしてから五日経った朝方、とうとう免許皆伝の日が来た。
オリの中でラフィネと俺対ホブゴブリン。大きさは二メートル近くある。
「よしラフィネ、行くぞ!」
「はい!」
「『スパラグモス』!」
ラフィネが魔法を唱えるもホブゴブリンは消滅しない。
「そんなヤワな魔法じゃそいつは倒せんぞ!」
「分かってます。お兄様!」
「任せろ!」
ラフィネの魔法によって消滅はしなかったものの少しは怯むし目眩ましにもなる。
「『マジックシェード・ウインドショット』!」
「『マジックシェード・スパラグモス』!」
習ったとおりに剣に魔法を流す。良い装備ほど魔法は通りやすいので高価なミスリルと最強のエクスカリバーはとても魔法を通しやすい。
当たり前だろうけど初級魔法より中級魔法。中級魔法よりも上級魔法を剣に流した方が強い。
ホブゴブリンの拳をかわしまずはラフィネが剣を振る。
中まで魔法が届いたためか斬った所が消滅していく。
「ウゴオオオ!」
ヤバい!見とれてたらこっちに敵意が向いた。
「お兄様!」
「マサト!」
「早く逃げるんじゃ!」
俺に向かってデカイ拳が向かってくる。剣を振るが間に合わない!
…死ぬ!死ぬ!…………死…ぬ。
…………何でホブゴブリンの腕が切れてるんだ?振るスピードも切れ味も足らないはずなのに…。
ホブゴブリンのもう一方の腕がまた俺に向かってくる。
また振るスピードが足らないはずなのにもう一方の腕も切れた。
……!もしかして風の魔法を流したから振る速度も切れ味も上がったってことか!?確かに、オールドのじいさんは風魔法を流すと切れ味が上がるっていってたし、そういうことにしておこう!ていうかそういう事だろう‼
瞬時にホブゴブリンの後ろにまわり体を挑発的にツンツンと突く。
「ウガガ、ガアアアアアア‼」
とてつもなく怒ったホブゴブリンが頭突きをしてくる。
それを待ってたんだ!
ホブゴブリンをの周りを剣を立てながら高速で一周する。
二周目に入ったときにはもう、ホブゴブリンの首と体は繋がっていなかった。
「いやーおめでとうおめでとう!免許皆伝した人が出てくれてワシも嬉しいよ」
緊張の糸がほどけた俺は地面に座り込んでいる。
「マジで死ぬかと思ったー。……よし、今日はパーティーだ!俺がメチャクチャ美味しいカレーライスを作ってやるよ!」
俺の言葉に皆キョトンとしている。
「かれーらいすとは何ですか?料理というのは分かりますが聞いたことありません」
「あたしも初耳だよ。なんなんだその料理」
「まあ待てよ。その料理はできてからのお楽しみだ。それよりスパイスとかカレールーをどうにかしないとな」
と言いつつも準備の良い俺はカレールーの作り方は何となく知ってるし材料もどこで採れるか勉強済みだ。家庭科の調理実習Aの力を見せてやる!
「まずは材料集めからだ!」
「「おー!!」」