チートな消毒液
「ここに着いた時には確かに指を負傷していたはず。エリア内にリジェネ効果? 疲労の回復も早すぎる。あんなにヘトヘトだったのに」
メグナドはぶつぶつと自分の体に起こった異変について考察をしている
「なあ、嘘をついた事はもうどうでもいいんだけどさ。結局どうするんだ? 怪我が治ってるならここにいる必要はないだろ」
「嘘じゃない! 本当に指を怪我していたの!」
「おいおいでかい声を出さないでくれよ。怪我がそんなすぐに治るわけがないだろ」
いきなり怒鳴られた事により店員孝太郎くんは少し及び腰だ
普段は相手をからかうといった会話術をベースにしている男だが、相手を怒らせたとわかると逃げ腰になってしまうのだ
「そうだ、試せばいいんだ」
そう言うとメグナドは腰に着けた小振りの短剣を引き抜き抜刀。標的に狙いをつける
いきなり目の前の人から刃物をちらつかされた俺にとってはたまったものではない
「っ?! まてまて! 話せばわかる。金が欲しいんだろ。少ないけど今日の売上金が金庫の中に入っているんだ」
即座に店の金を身代わりに生命の保身に走ろうとする男孝太郎
店を守る気はないのか
「えいっ!」
短い掛け声を上げたかと思うと彼女は手の甲を短剣で薄く切り裂く
じわじわと切れた皮膚から赤い血液が吹き出し、それを見つめる
「傷が治る気配がない。リジェネエリアってわけじゃないみたい」
「ばか! ビビらせるんじゃない! てか、何で自分の手を刺してるんだよ・・・・・・。メンヘラか」
そう言い残すと俺は救急用品のコーナーに走る
消毒液を取りに来たのだ
「あったあった。擦り傷、切り傷にはマキュロンでいいよな」
お値段は何と驚きの580円、今ならレシートもついちゃう
更には800円以上のお買い上げで豪華食品が当たるデンジャラスくじもやっているんだなこれが
「つうか、あの女の硬貨が使える訳ねえよな。代金俺持ちかよ。勘弁してくれ」
仕方なく自分の財布から金を取り出す事にするが、ここで驚く事が起きる
何と、日本円が入ってるはずの俺の財布にはメグナドが渡した物と同じ銀貨や銅貨が詰まっているのだ
「俺の諭吉! どこだ! どこに行ってしまったんだ! こんなよくわからん硬貨いらんぞ! うぅ、九州の博多に帰りたかぁ(関東出身)」
諭吉を呼んだ彼だか、そもそも孝太郎の財布には2800円しか入っていなかった。図々しい男だ
「財布はずっとポケットの中に入れていた。金を入れ替える猶予なんて一切なかったよな。これゃあ本格的に非現実を受け入れないとだなぁ。 って事はだ」
金が日本円からこの世界の硬貨に変わったのは意味があるはずだ。マキュロンのバーコードをスキャナーで読み撮ると、画面には大銅貨6枚と表示された
「まあそうなるだろうね」
メグナドから預かった袋から銅貨を取り出し自動精算機に入れる
精算機から「ご利用ありがとございました」と無機質な音が流れた
無事支払いを終えたようだ
消毒液を持ってバックヤードに戻る
「お待たせー、ナイフで切った方の手を出しな」
「ん」
「これは消毒液だ。少し沁みるけど我慢しろよ」
「ん」
口数の少ない奴だ、まあいい。彼女の手に消毒液を塗ってやる
するとメグナドの傷口は瞬く間に塞がり、ナイフで突いたはずの傷口は元の傷一つない綺麗な状態に戻っていた
「まじかぁ、やっぱここは非現実なんだなって。それかアンタの体がおかしいのか・・・・・・」
そう言って俺は頭を抱える
「リジェネ効果のエリアじゃなかったから、やっぱりアイテムが原因。この男・・・・・・」
この男使える。女の口は歪に歪んでいた