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メロンパンとスムージー

「これ美味しいじゃん、普段は固いパンばっかだから。何か凄い甘いし」


女は売り物のメロンパンを最後の晩餐と謳ってムシャムシャ食べている

魔物はコンビニの敷地内に入れないから安全なんだけどね、女はその事を知らない


しかしタダで店の物を飲み食いされてはたまらない、慈善事業ではないのだ


「あのさ、一応ここは食い物を売る店でそれは売り物なんだよね。金払ってから食ってくれよ」


「ん」


一言だけ女は声を出すと懐に入っている小さな布袋を取り出し俺に手渡す

ジャラジャラと硬貨が入っているであろう袋はズッシリとしていて中々重い

中身を確かめてみると中に入っているのは銀色と銅色のコインだった


どこの国の金だこりゃ、ドルでもペソでもルピーでもねえぞ


「日本円は持ってないか? クレジット決済とかでもいいんだが」


「にほんえん? なにそれ。あー、やっぱアンタ異国の人間なんだね。そんなおかしな恰好した奴この国で見た事ないもん」


「異国ってなんだよ。ここは日本じゃないのか」


「にほんねぇ。聞いたことないね。ここはガレスタ聖国でしょ? そしてここは洞窟ダンジョンの中枢。アンタ自分が今いる国の名前わかんないの?」


困ったな、さっぱり状況がわからん。そもそも店の周りに洞窟があるのも、岩の体をした蜂の化け物にしても地球とは明らかに環境が違う

転移・・・・・・か


「あの時の地揺れがきっかけか? バミューダトライアングルみたいな。オカルトはあんま詳しくないなぁ」


「ねえ、前にもここに来た事あるけどこんな建物なかった。それに店って言ってたけどダンジョンの内部で店を開くなんて正気? 周りは魔物だらけだし商品の運搬も護衛がいるし割りに合わないでしょ」


彼女は二つ目のメロンパンに手を伸ばしつつ俺に尋ねる


「やりたくてこんなとこで商売してるわけじゃねえよ。地揺れが起こったと思ったら急に店がこの洞窟に転移してたんだよ。あと、そのパンはもう止めときな。トランス脂肪酸の塊だぞ。野菜を食え野菜を」


そう言って売り物のシーザーサラダを女に勧める


「野草は普段から食べ慣れてるからいらない、最後の晩餐って言ったでしょ。好きにさせてよ」


「じゃあせめてスムージーくらいは飲んどけ。少しは野菜の代わりになるから」


そう言ってスムージーの入った紙パックを無理やり女に手渡す

彼女は受け取った紙パックを手でクルクルと回しながら飲み方を思案しているようだった


ペットボトルの水の時もそうだったがこりゃあ完全に地球とは文化が違うな

こんな物の飲み方なんて日本なら小学生だって知っている


俺は紙パックに入ったカフェオレを手に取りやり方を見せてやる

彼女は俺を真似てようやっとスムージーのパックにストローを刺すことに成功した


「!? うまっ! 甘いだけじゃなくて酸っぱい。それでいて飲みやすい。パンも食べた事ない味だった」


「お口に合って何よりだよ。それとな、お前の食事は最後の晩餐にはならない。何故ならここは安全だからだ。外に出てさっきの化け物共を見てきなよ」


「倒したの? まさかあの数を!!」


女は慌てて外に飛び出し壁の周囲を確認する

魔物の蜂はいまだにガシガシと壁に齧りついているが、相変わらず傷1つさえ付いていない


「あ、ありえないこんなの・・・・・・ 上位の結界・・・・・・ あんた結界師なの?」


驚いているようだが俺は結界なんて張れない

しがないコンビニ店員に過ぎないんだから


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