395話三瓶田Ver『女湯を覗こうとするヤンキーに反抗してみた』
タイトルにもある通り、395話三瓶田Verです!
親にどんなことを言われたのか気になる読者さまがいらっしゃったので書いてみました。
本編では奏介は黒木家にいるので、通話だけだったのですが、こちらは軽いifということで。
三瓶田と三瓶田父のやりとりは392話参照です!
その日は村人達の好奇の視線に耐え、時には威嚇しながら、立ち入り禁止の学校の屋上へ逃げ込み、そこで三人で煙草をふかして帰宅することにした。と言っても、三瓶田が家に着いたのは深夜の三時過ぎだった。
三瓶田和久は玄関の鍵を開けて中へ入ると、舌打ちをした。正面に見えるリビングの明かりがついている。
(俺が帰るまで待ってた。悩みがあるなら話を聞く〜ってな)
一人で息子を育てる可哀想な父親を演じているようで本当に腹が立つ。何度も話し合いを持ちかけられたが、その度に断っていた。
(どうせ今日も、な)
もちろん、リビングには顔を出さず、自分の部屋へ。ドアを開けようとすると、ガンと音を立てた。何かにぶつかったようだ。
「ん?」
室内を覗くと、所々に段ボールが積まれている。まるで物置のように。
カッとなった。
ドアを乱暴に閉め、リビングへ駆け込む。
「おい、クソ親父!」
父親は酒を飲みながら、スマホで動画を見ていた。
「なんだよ、あれは。俺の部屋に荷物ぶち込みやがって」
無視。ほろ酔い気分らしい父親は楽しそうに動画を見ている。
「おい、クソ野郎っ」
その態度が非常に腹が立った。
「……ん? なんだ。帰ってきたのか」
三瓶田はテーブルに手のひらを振り下ろす。
バンッと音を立てて、テーブルが揺れた。
「ふざけるのも大概にしろよ」
「なーに、怒ってるんだ? 生理でも来てるのか?」
思考停止した。馬鹿にしたような目、ヘラヘラとした口元。酔っていたとしても、ここまで下品なことは言わないはずだ。鳥肌が立つ。
三瓶田はごくりと喉を鳴らした。
「そういや、お前の母親は終始ヒステリックで、お前にも時々暴力を振るっていたな。いやぁ、そっくりだ。心も女だもんなぁ」
「オレと母さんをバカにしてんのか?」
「今頃気づいたのか? お前ら親子揃ってバカだなぁ」
カッとなって胸ぐらを掴んだ。
「てめぇのせいで出ていったんじゃねえかよ」
思わず唸るように言う。その反面、ドキドキしていた。三瓶田の母親は他に男を作って出て行った。父と一緒に暮らすうち、反抗期に入り、そもそも母親が浮気したのは父親が不甲斐ないせいだと無意識に思うようになった。思い出の中の母親はそれなりに優しかったように感じたし。亡くなった人が美化されるように、目の前から居なくなった人のことは良い思い出としてずっと残り続ける。
父親は動じず、ため息を一つ。
「ああ、そうだな。それで? だからなんだ? 出て行ったのはおれのせいだから、お前はおれに何をしてほしいんだ」
言葉に詰まる。
「おいおい、そこで黙ったら馬鹿丸出しだぞ?」
父親は容赦なく三瓶田の手の甲を叩いて、
「痛っ」
すっと距離を取った。
「あの馬鹿女はこの家に若い男を連れ込んでヤッてたんだよ。おれのベッドでな。本当に気持ち悪い。お前も」
父親は薄ら笑いで指を指してくる。
「どうせ男を連れ込んでイキ狂ってんだろ? 気持ち悪いなぁ、お前」
「っ……!」
とにかく言葉選びが下品だった。心配顔と控えめな笑顔しか見たことがないし、母親の文句など言ったこともない。そんな父親が。
壊れてしまった。三瓶田はそう思った。絶対に味方で心配してくれる存在が目の前から居なくなったようで、途端に不安になる。しかし、ここから態度を変えるなど出来るわけがない。
「は、はは。やっと本性を出しやがったか、このクズが」
すると父親は三瓶田の前に封筒を投げた。
「あの女の今の住処の住所だ。調べてくれた人がいてな。そこへ行って母親とでも暮らせば良い。話がまとまったら、親権を渡すから、まぁ、よろしく頼む」
「なっ、待っ」
「クズとは、暮らしたくないだろう? さっさと出ていけ」
何も、言えなかった。いくら辛く当たっても、自分に対して心配し、理解しようと声をかけ続けてくれた父親に、こんなことを言われるとは思っていなかった。
(は? なんだこれ)
「おい、いつまでもそこへ立っていられると男臭くなって堪らん。おれの前からさっさと消えろ」
ゾクリとした。冷たい目、恐らく自分に対して何も思っていない。今になって母親を思い出すと、自分の機嫌が悪い時は当たられていたことを思い出した。そんな母親のところへ行って、受け入れてもらえるのだろうか。家を出ていく時、こう言われたことを思い出した。
『はぁ、産むんじゃなかったわぁ。面倒いし』
「……はんっ! ああ、そうか。ここに来て育児放棄ってやつか。責任ない奴が子供持つんじゃねぇよ」
ピクリと眉が動いたのが分かった。
(動揺してんじゃん、こいつ)
このまま押し切れる。そう思った。
「産んでくれ、なんて頼んでなかったし、勝手に作っといて説教とか完全自己中じゃん。何言われても、成人まで面倒見るのって親の義務、なんだろ?」
父親はにやりと笑った。
「産んだのはお前の母親だろ? これは育児放棄じゃない。お前が望んで母親が良いと言ったんだ。今までの罵倒からも分かるしな。それともなんだ? お前は今まで通りおれと一緒に暮らしたいと言ってるのか?」
「はぁ? 誰がてめぇなんかと」
冷や汗が吹き出た。こんな風に言ってしまったら後戻りが出来ない。
「そうか。なら答えは簡単だ。あの女の所で暮らせ」
切り捨てられ、立ち尽くす。
「っ! そうかよ。こんなところ、二度と来ねぇよ!」
踵を返し、家を出て行った。
その様子を見て、肩を落とす三瓶田父。
「お疲れ様でした」
「あ、ああ。菅谷君。ちょっと言い過ぎてしまったかなと」
「いや、そんなことないですよ。……」
元妻関連でアドリブ多めだったので戸惑いはしたが、結構なダメージが入ったのではないかと思う。
「あの元奥さんとは」
「ああ、本当のことだ。しばらく浮気に気づけなかった私も悪いのだが。自分の子供には……興味がなかったんだろうな。それなのに、息子は母親のことが好きらしい。面倒を見てきた私よりね。母親というものには勝てないんだろうな……」
「いや、息子さんが頭悪いだけですよ。普通、あの年齢まで育てて貰ったら、多少感謝はします。大丈夫です。息子さんが頭悪いんです」
「いや、まぁ、うん。君、容赦ないな。しかし、これで良かったんだろうか」
「大丈夫です。後はこっちで色々やりますから。最終的に警察のお世話にしてしまって良いんですか?」
三瓶田父は疲れたように頷いた。
「ああ、何より他人様に大変な迷惑をかけているから、反省してほしいんだ。私の声は届かなかった。それしかない」
「反省、そうですね。だったら良いですね」
奏介は少しだけ冷たい言い方をした。
(反省して許される範囲は越えてる。社会的に抹殺した方が良い人種だよ。あなたの息子さんは)
この後の流れは黒木と似た感じです。




