女湯を覗こうとするヤンキーに反抗してみた5
明けましておめでとうございます!昨年はお世話になりました。今年もよろしくお願いします!!
二日前の木曜日。
黒木達とクラスメートの穂原海里はとぼとぼと学校からの帰り道を歩いていた。
(今月のおこづかい、どうしよう)
海里は親の方針でバイトもしていないので、月の小遣いである五千円は貴重な収入源だ。ほしいものがあるとか、申請すればそれなりに追加してもらえるが、昨日の今日でゼロになったなど言えない。
(黒木君達って、なんでこうやって僕が困ることを平気でできるんだろ)
他人から奪ったお金、自分たちは良いだろうが、奪われた人はどう考えても困るだろう。それをなんとも思わないなんて。
(本当に、絶対に分かり合えない人種だ。なんで、世間にはああいう奴らが一定数いるんだろ)
詐欺や窃盗、強盗と同じだ。
もやもやしながらも、帰宅すると玄関に村広報の冊子が置かれていた。回覧板が回ってきたのだろうか。
「え」
広報誌の表紙に気になる記述を見つけたのだ。
『相蘇村動画配信アカウント開設!』という見出しだ。開いて確認すると、村の紹介やイベント情報など、観光客兼村人に向けて動画配信を通じて情報発信をするようだ。
(凄い。役場の公式アカウント作って配信でアピールなんて新しい。あ、兄さんの先輩が村役場に戻ってきたんだっけ)
海里の兄は現在大学四年、その先輩とはいえ、23歳の若者なわけだ。閉鎖的であり、さらには高齢の村役員が多い中、新しい試みに踏み切ったのかもしれない。
部屋に戻って、検索してみると、動画サイトに相蘇村のアカウントは出来上がっていて、村の紹介や特産物、道の駅、村で有名な銭湯の紹介が残されていた。
そこでどきりとした。ゆきべ銭湯の動画だけ、視聴回数が五十万を超えている。再生してみると、普通の銭湯紹介動画だが。コメント欄が荒れていた。
『ここ、入りに行ったけど、若い子達がやりたい放題で怖かった』
『銭湯前で思いっきり絡まれて、逃げました』
『ナチュラルに女湯覗いてて引いた。しかも、銭湯のおばちゃんが口頭注意だけって』
↑返信
『それ、見たよ。警察呼んでなかったよね。子供の遊び扱い?』
狭い村なのでゆきべ銭湯の娘とは知り合いだ。最近、彼女も悩んでいる様子なのが伝わってきている。
(行部さんの家、大丈夫かなぁ)
止める人間がいない。村が内側から崩壊しているような気がして、ちょっと怖いと思った。
そして、現在、土曜日。
自主学習のために学校にいた海里は周囲の同級生達のざわつきに気づいた。たまたま近くを通りかかった知り合いに聞いて、例の村の動画アカウントを開く。
そこには暴れる黒木達と見知らぬ少年が対峙していて、言い争いをしていた。
(心は女って……気持ち悪い言い訳。え、なんか)
ぞくぞくする。黒木達が少年の正論にかなり押されているのだ。
(そう! そうだよ。いや、凄い正論。うん、もっと言って!)
気づけば周り皆、スマホで配信を見ているようだ。
~配信中~
『そ、それはオレの』
黒木の服らしい。
少年、もとい奏介は床にそれを置いて、その中に手を突っ込む。
『ほら、こういうことだろ?』
籠の底から出てきたのは可愛らしいピンク色のブラだった。ちなみにAカップだった。
(変態じゃん!)
その後も配信が続き、結局言い負かされて、尻尾を巻いて逃げかえって行った。
(す、スカッとしたぁ……)
見知らぬ少年と握手を交わしたいところだ。
その帰り道、黒木達と鉢合わせしたので、不意打ちでブラいじりをしてやったら、度肝を抜かれた顔をしていたわけで。
その呆気に取られた顔が人生で一番気持ちよかった。
●
黒木は逃げた海里を追えなかった。
(あんなのにバカにされるなんて!)
次会ったら思い知らせてやる。怒りがふつふつと湧いてくる。
そこで商店街の客達の様子に気づいた。
「ん……?」
ひそひそ、くすくす。老若男女が皆こちらを見ているような。
「あ、ブラジャー男~」
「こいつら、女らしいぜ!」
「いや、普通に犯罪なのに言い訳してるの、やばいよな~」
土曜日登校で帰宅中の小学生達がランドセルを背負って駆け抜けて行く。
ニヤニヤと完全に馬鹿にしたように。
「こ、このガキども!!」
三瓶田が叫ぶが、
「にげろー、キモさが移る~」
小学生達は細い路地へ逃げて行ってしまった。
嫌な汗が黒木の頬を伝う。
(まさか、村の奴ら……全、員?)
ようやくそこで、気づいた。
商店街の客達の熱烈な視線に。
毎年新しいことしたいと思うのですが、仕事が忙しくなり……。ゆるゆる更新は頑張りますので暇潰しに活用してもらえると嬉しいです。




