男の子ママに女の子マウントを取ってくるママ友に反抗してみた1
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高平、江戸前とメイドカフェに行ったその日の帰り。午後一時頃。
奏介の住むマンションの前で田辺ユキノと先日のキラキラネーム騒動の小野が話し込んでいた。お互いに奏人とミカを抱っこしている。
「あ、菅谷君。こんにちは」
笑顔で手を振る田辺、目を瞬かせ、軽く会釈をする小野。
「こんにちは」
「遊びの帰り?」
「はい。小野さんも、ご無沙汰してます」
「えぇ、この前はお世話になって」
ぎこちなく笑う。
「だー」
小野に抱かれながらミカが手を伸ばしてきた。つられてなのか、奏人も。
「うーっ」
「えーと」
奏介は戸惑ったように二人を見比べる。
「大人気だね、菅谷君」
田辺がニコニコ笑う。
「子供に好かれる方なの?」
と、小野。聞けば、ミカはパパ以外の男性に対し、人見知りになってきたのだという。
「え、いや、そんなことは……」
あいみの顔が浮かび、とりあえず黙った。自覚はないが、もしかしてと思った。
と、そんなことをしているうち、二人のママ友なのか、男の子を連れた女性が近づいてきた。
「お待たせー」
背中に赤ちゃん、抱っこしているのは二歳くらいの男の子。そして手を繋いでいるのは四歳くらいだろうか。
「遅れちゃってごめんね!」
「良いですよ。あれ、全員連れてきたんですか」
「そーなの。預けてた母が急に出勤になっちゃって。あら、こんにちは!」
元気よく挨拶されたので奏介も会釈混じりに返した。
彼女は綿貫というらしい。三人は保育園のママ友だそうだ。彼女は三人目の男の子と奏人、ミカが同級生だそう。
「ほーら、ご挨拶は」
四歳の子は消え入るような声で『こんにちは』と言い、綿貫に抱きついて、顔を埋めた。
「ごめんなさいね、人見知りで」
「いえ。これから皆さんでどこか行くんですか?」
「綿貫さんが知ってる、ベビー服の安いお店に行くんだ。菅谷君も行く?」
「いや、俺は良いですよ」
田辺も冗談で言ったのだろう。いたずらっぽく笑っている。
「そういえば、今、わたし妊娠してんの」
「へ?」
目を瞬かせる田辺。小野も目を見開いて、
「まさか、女の子が」
「そのまさか。息子も滅茶苦茶可愛いけど、やっぱり女の子欲しいじゃない? 生まれるまで頑張るつもりよ!」
どうやら、三兄弟の他に女の子を望んでいるようだ。そのために四人目の子供を考えたらしい。
「そう。女の子可愛いしね。応援してる」
「ありがとね、小野さん!」
「わたしも女の子育ててみたいなぁ」
「田辺さんとは同士になれそうね!」
と、その時。四歳の男の子がじっと奏介を見ていた。
「ん……?」
「このお兄ちゃん高校生なんだって」
何やら興味津々のよう。
数十分後、奏介は綿貫の長男、晶哉と手を繋いで、ベビー服専門店にいた。
「ごめんねー、菅谷君。助かっちゃう」
「あーいえ……」
問答無用で懐かれたわけだが。
「待っててねー、晶哉?」
「うん」
三人は楽しそうに中へと入って行った。
「僕さぁ、ママがたいへんなの分かるんだよねぇ」
妙に大人っぽい言い方である。
「大変か。弟が二人いるから?」
「うん。ぶっちゃけ前は寂しかったけど、赤ちゃんすぐ泣くし、冬太も甘えん坊だし、僕がしっかりしないとじゃん?」
四歳くらいなのに妙に達観していた。ませているとも言う。
しばらくして、荷物を抱えた綿貫が戻ってきた。
「お待たせー。二人はもう少し見るみたい。ありがとね、菅谷君」
どうやら晶哉が心配で戻ってきたらしい。
「いえ、晶哉君は、見てますからゆっくり見てきて大丈夫ですよ」
「そ、そう? すっごい助かっちゃうけど」
嬉しそうにそわそわ。子供が三人もいると買い物だけで一苦労なのだろう。
と、店の入口に近づいてくる人物が二人。
「あれ? 綿貫さんじゃないですか。こんにちは〜」
女の赤ちゃんを抱っこしている眼鏡の女性と、幼稚園の制服を来た女の子を連れたショートヘアの女性。よく見ると、背中に女の子の赤ちゃんをおんぶしていた。
「あ、えっと、こんにちは、位筒さん、間嶋さん」
顔を引きつらせる綿貫。あまり仲が良くないママ友なのだろうか。
「あら? もしかして男の子四人になっちゃいましたー?」
からかうつもりなのか、奏介を見てくすっと笑う。
「あ、はは。この子は知り合いの高校生ですよ。今、買い物をするので息子を見てもらってるところで」
「男の子って大変よねぇ。目を離すと、すぐ走り回るじゃない? 綿貫さん、女の子良いですよー?」
「やんちゃですけど、男の子も可愛いんですって。でも、やっぱり両方。女の子、わたしもほしいんですけどねー」
明るく言うが、少し寂しそうだ。
「それにしても、三人も男の子なんて絶対に無理ですよ、わたし」
「あたしも無理。追いかけっことかとても出来ない。女の子の方が可愛いし、将来も息子なんかより当てになりそうだし」
「そうそう、お嫁さんの子供なんかより、娘の子供の方が良いわよね!」
一体いつの話をしているのだろうか。
「それに」
ちらっと奏介を見、
「オタクとかに育っちゃうと気持ち悪いじゃないですか」
奏介は眉を寄せた。
「……」
口を閉じる綿貫。
男の子を下げ、女の子を上げる。完全にマウントを取りたいだけのようだ。
「ほんと、女の子で良かったと思いますよ」
「綿貫さん」
奏介は綿貫へ笑いかける。
「どうしたの?」
「こうやって意地の悪いこと言い出すのって女性が多いですよね。将来こうなるって思うと」
奏介は嫌そうに二人を見る。
「女の子、そんなに良いかなって思います」
固まる位筒と間嶋。
「な、なんですって!?」
「あ、失礼しました。女性を一括にしちゃダメですよね。他の女の子のママさん達に失礼でした。女の子が欲しいママさんにネチネチ嫌味言うような女性を見てると、男の子を下げてまで女の子を上げるのどうなのかなって思って。マウント取り楽しそうで何よりです。性格が悪い、元・女の子さん達?」