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見た目いじめられっ子の俺は喧嘩売られたので反抗してみた  作者: たかしろひと
第3章 続・だらだら日常編(波乱あり)
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番外編 夢オチ 法律のない世界で物理的反抗をしてみた

注意※この話では、普段の主人公ならやらないような行為をします。イメージが壊れる可能性があります。ご注意下さい。また、この話数を飛ばしても問題なく続きをお読み頂けます。

 いつもの夢だった。小学生の頃の。

 奏介は自分のクラスの前に立っていて、足がすくんでいることに気づく。

 始まりから夢だと気づいたのは意外に初めてだ。自分は高校生で今、小学生時代の夢を見ている。

(変な感じだな)

 目の前がふわふわしたり、白黒になったりカラーになったり。

 深呼吸をして、戸を開けた。

 途端に教室が静まり返る。どうやら石田を怪我させた後の世界のようだ。

 ヒソヒソと悪口が聞こえてくる。味方が消え、孤独になったあの時。

「おはよー、菅谷」

「え」

 声の方を見ると、何かが飛んできた。

「!」

 ばふっと粉が散って、黒板消しが当たる。

「あうっ」

 勢いで尻餅をつくと、石田がニヤニヤ笑いながら立っていた。

「よく学校来られるよなー」

 とチャイムが鳴り、皆が席に着く。手を貸してくれるものは誰もいない。そして、土岐が入ってきた。

「! あなた何をしてるの!? また余計なことをして、早く片付けなさいっ」

「え、いや、石田君が」

「言い訳してないで早くなさいっ」

「……」

 奏介は立ち上がって、黒板消しを黒板の下に引っかけた。それから服を払っていると、

「痛っ」

 誰かが投げた消ゴムがこめかみに当たった。結構な勢いで投げられたのか、石でも当たったかのよう。

 くすくすと聞こえる笑い声。奏介はようやく自分の席に着いた。机に……糊が塗られていた。

 授業はスキップをされたかのように一瞬で進み、給食の時間になった。

 自分の席に着いたところで石田が横に立つ。

「あー、手が滑ったぁ」

 トレーごとお椀やおかず皿などが床に舞い、奏介の机の上には何も残らなかった。

「……」

「ごめんごめん。今日ぴったりだからもうお前の分ないっぽいなー」

 石田は笑いながら自分の席へ戻って行った。

 そして、

「菅谷君っ、何食べ物で遊んでいるの。さっさと片付けなさい」

 土岐の声。石田の行いを目の前で見ていたにも関わらずこの発言である。

 そして、隣の女子も嫌そうに言う。

「ねぇ、早く片付けてよ。床、滑るでしょ」

 奏介はゆっくりと立ち上がった。それから石田の机の横へ。すでに食べ始めているが、彼はニヤニヤしながらこちらを見上げてくる。

「お、なんだ? 分けてほしいのか? キャベツくらいなら良いぜ?」

 奏介は上履きを脱いで、それを手に持った。そして、振り上げる。

「へあ?」

 石田のキョトンとした顔。振り下ろした上履きが石田の頭に直撃し、スコーンという小気味の良い音がした。

「いってぇぇっ」

 あまりに突然のことに石田が声を上げる。奏介は上履きをぱんぱんと手のひらで鳴らしながら、怯えた表情を作る。

「ご、ごめん、手が滑って……。だ、大丈夫?」

 おろおろした奏介の様子に、しんと静まり返る教室内。

「て、てめぇっ」

 勢いよく立ち上がったところを再び脳天をぶっ叩く。

 スコーンッ!

「あふっ!?」

 バランスを崩しそうになって、頭を押さえた石田は涙目になっていた。不意討ちの強烈な痛みから来るものだろう。このくらいで泣くやつではない。

「いった……。こ、この二度も」

「ごめんね、手が滑って」

 奏介は泣きそうな声で言ってみる。

 このアンバランスな奏介の様子にクラスメート達は困惑するばかりだ。

「よ、よくも」

「ご、ごめんなさいっ」

 奏介は数歩下がってから、上履きを力の限りぶん投げた。

「あがっ!?」

 見事眉間に直撃。石田は後ろに尻餅を着いたのだった。奏介は無言で彼の味噌汁お椀を持ち、頭からぶっかけ、その茶碗を顔面へ投げつける。

「ぶはぁ!?」

 それから上履きを履いている方の足で頭を思いっきり踏みつけた。

「おぐっ!?」

 額をかかとでグリグリ押してやると、

「いだだだだっ、な、ながっ、やめっ」

「調子に乗ってんじゃねぇよ、クソガキが」

 奏介はしゃがんで石田の胸ぐらを掴む。

「マジで、5、6、す、ぞ」

「ひぅ!?」

 奏介は石田を突き放すと、彼の給食のトレーを豪快に床にぶちまけた。

 唖然とする教室内。

「てめぇの分の給食もないみたいだな? でもまぁ、床に落ちた飯がお似合いなんだよっ」

「な、な、なんだ、お前、菅谷?」

 奏介は落ちていた白米を拾って、石田の口へと突っ込んだ。

「あが!?」

「氏ねっ、このクズっ」

 そのまま手のひらで押して、床に後頭部を打ち付けさせたのだった。

 泡を吹いて気絶した石田を見て、ゆっくりと立ち上がった奏介は教室内を見回す。

「で、次は誰だ?」

 

 そこで奏介ははっとした。

 薄暗い部屋、見慣れた天井。夢から覚めた後の疲労感。しばしぼんやりとする。

 あれだけやったのに、親呼び出しもない、土岐に叱られることもない。

「……続き見たい」

 奏介はすぐに目を閉じた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 【…こうして、彼の世界には新たに《閉じられた街》が生まれたのである。彼の怒りが消えるまで、囚われ続けるのだ。】 かな~り昔に、ダークホラーなファンタジーのネタ(エグいやつ)として考えた設…
[一言] 石田「何か怖い夢を見た・・・」
[一言] 次はクズ教師へので頼みます
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