怪我をして意識がない父親を罵る娘に反抗してみた2
「わたしとお母さんのせいなの。あの子を巻き込んで悪口言ってたから」
姫は腕を組んだ。
「小さい頃からお父さんを悪者にしてたから妹ちゃんの中では何かされたわけじゃないのに嫌いなのね。んー、でも交通事故で一切心配しないって相当ね。普通、嫌いでも多少は心配しない?」
秋原は頷く。
「お父さんのベッドのそばで悪口言ってるし、わたしとお母さんまで看護師さん達に白い目で見られてるの。でも、原因のわたし達が何か言っても説得力ないでしょ?」
「いや、秋原ちゃん達が原因ならむしろ妹ちゃんを罵るべきじゃない? 怪我人だからちょっと違うけど、なんていうか死体蹴りみたいなものだし」
確かにちょっと違う。だが、言いたいことは分かる。
「あたしが言ってあげよっか?」
にっこりと笑う姫。
すると、秋原は慌てる。
「そ、それは良いよ! 姫先輩がいうと脅しになっちゃう」
「もちろん、言うからには泣かすわよ? 酷い怪我してるお父さんバカにするとか許せないし、ね」
「いや、姉さん」
黙っていた奏介は姉を肘で打った。
「まあ、そう言われると思ってこれ連れて来たからね。うちの奏介ならもう少しだけ穏便に済ませてくれるわよ」
「そ、そうなの?」
「お見舞いに行く振りして、話を聞きましょ」
奏介は肩を落とした。
いつの間にか巻き込まれていた。
姫、秋原について訪れたのは病院だ。ここに父親が入院しているらしい。
脳波に異常はなく、普通の一人用病室に移されたそうだ。
病棟三階に上がり、秋原父の病室へ。
姫は道中で買ったドライフラワーを手にしている。面識はあるとのことで不自然ではないだろう。
と、エレベーターから降りた時である、女性の言い争う声が聞こえてきた。
「え」
秋原が青ざめる。
「まさか、ハナ?」
早足になる彼女についていく。
その声はとある病室の中から聞こえてきた。
考えるまでもなく、秋原父の病室のよう。中へ入ると、点滴をしている男性の眠るベッドのそばで中年女性と制服姿の女子高生が言い争いをしていた。
「だから、こんなのといつまでも一緒に住めないっしょ!? 早く別れてよ。きもいし、くさいし、役立たずだし、要らないじゃんっ」
「お父さんになんていうこと言うの?」
母親は涙目だ。
「事実じゃん。あたしの人生にこいつ必要ないからっ」
相当な嫌われ具合だ。
と、秋原妹がこちらに気づいた。
「お姉ちゃん? お母さんになんとか言ってくんない? 信じらんないの。こいつを庇うんだよ。……てか、その人達誰?」
「こ、こっちはお父さんのお見舞いに来てくれた菅谷姫さんと菅谷奏介さん」
すると秋原妹は舌打ち。
「こいつのお見舞いに来た奴らなんか追い出してよ」
「……ふーん? このガキが秋原ちゃんの妹かしら?」
見ると、姫の目が据わっていた。
奏介は姫の前に出る。
「俺が言うから、姉さんは口出さなくて良い。普通に頭に来た」
「そ。任せるわ」
奏介は一歩前へ。秋原妹を真っすぐに見る。
「怪我して話せない父親相手に暴言吐くほど嫌いなら、今すぐ学校辞めて一人暮らししながら働けよ」




