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見た目いじめられっ子の俺は喧嘩売られたので反抗してみた  作者: たかしろひと
第3章 続・だらだら日常編(波乱あり)
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壱時祐太after

 壱時家にて。

 奏介と真崎は連火の部屋へお邪魔していた。

 ローテーブルを囲み、出された緑茶をすする。

「お願いっス。兄貴達っ」

 頭を下げ、両手を合わせる連火である。

「……って言われてもな。おれ達がネタ提供出来るかっつったら無理だよな」

「うん。あ、女子何人か連れてくれば良かったね。しおとか知ってるから」

「伊崎な。漫画好きだしな。そういや、知り合いの女子に恋愛経験豊富なやついないよな?」

「僧院が……」

 言いかけて止めた。男子と付き合っていた経験があるとはいえ殿山(あれ)である。

「で、どんなシチュエーションが……」

 真崎は言葉を止めた。

 連火は座ったまま、寝てしまっているらしい。

「はぁ。こいつ、ネタのことで昨日寝られなかったんだと」

「前から思ってたけど思い悩むタイプなんだね」

「漫画のこととなるとな。……よっしゃ、栄養ドリンクでも買ってきてやるか。ちょっと寝かせとこうぜ」

「俺も行こうか?」

「すぐ行ってくっから」

 真崎が部屋を出ていった。それから奏介も立ち上がる。トイレを借りることにする。居眠りをしている連火は放置しても問題ないだろう。

 部屋を出て用を済ませ、戻る途中に鉢合わせてしまった。

「っ!」

 壱時祐太は奏介の顔を見て固まる。

「……お邪魔してます」

 奏介はそう言って、連火の部屋へ戻ろうとしたのだが。

「あの」

 予想外なことに、祐太が話しかけてきた。

「はい?」

 奏介が振り返る。

「兄ちゃん、元気ですか?」

 質問の意味が分からず、ぽかんとする。

「連火さんのことですか? 隣の部屋なんだから直接聞けば良いんじゃないですか?」

 祐太は暗い顔をする。

「最近、顔を合わせてないので、元気にしてるかなと思って。……それじゃ」

 何やらやつれて見える。先日の無断転載の件が大分効いてるらしい。

 奏介はため息を一つ。

「仲直りは出来てない感じですか?」

 弟とは言え営業妨害、さらに連火の夢である漫画家の道を潰そうとしたのである。兄弟仲の修復は難しいのかもしれない。

 祐太が動きを止めた。

「……兄ちゃんは、もう怒ってないっぽいです。ただ、気まずくて。それに」

 祐太が言葉を切る。

「それに?」

 なんとなくその言葉が気になった。

「無料配布漫画を回収しようとしてるんですけど、一部の人から反発されてサイトのコメント欄が炎上したんです。コメ欄閉じたらサイトのチャットが荒らされるし。サイト消したいんですけど、それだと回収出来なくなるしで、どうしたら良いか分からなくて」

 そこまで話して祐太ははっとした様子。

「あ、すみません。じゃあ」

 一人で悩んでいるのだろうか。いそいそと部屋へ入って行こうとする彼、奏介はノブを握って閉まるドアを止めた。

「どんな風に炎上してるんです?」

「え」

「見せてください」

 百パーセント自業自得とは言え、奏介が関わったことで変わってしまった兄弟関係だ。少しだけ首を突っ込むことにする。

 祐太の部屋へ入り、机に置かれているパソコンを覗き込んだ。

「あー、なるほど」

 チャット欄が暴言で埋まっていた。

『ここの管理人、死なねーかな』『マジで死ね、詐欺師』

『死死死死!』

 批判系ではなく、ただの暴言だ。チャットなのでそれが今も流れている。野竹ナナカの時とはまた違ったパターンである。

「無料配布漫画の回収について、記事を書いたんですよね?」

「あ、はい。サイトのブログに書きました」

 ページを開いてもらう。

 文面は次の通りだ。


『無料配布漫画の回収のご協力


 わけあって、先日まで配布していた『フラクタデイズ』の無料漫画を回収したいと思います。

法律に抵触する可能性があり、自身で判断しました。ご協力よろしくお願いします。


送料はお支払します。下記の住所までお願いします』


 住所はこの家ではないようだ。

「これは大学の近くの、一人暮らし用の家のなんです。もう少しで引き払うからどうせなら利用しようと思って」

 一人暮らしをしてみたものの、経済的な事情で実家に戻ったらしい。成人するまでは親も何も言わないとのこと。

「それで、回収の経過は?」

「あ、はい。法律の下りに共感してくれた人も結構いて送って来てくれてます」

 確かに一部の輩が逆上して暴れているだけのようだ。もはや、無料配布を返すとか返したくないとかの問題ではない。皆で荒らすのが楽しくなっているのだろう。

「どうしたら、良いんですかね」

 奏介は途方にくれている様子の祐太の横顔を観察する。こうした行動に出ているということは、反省はしているのだろう。

「もう少し現実的な文を書いた方が良いですよ。管理者IDでチャットに参加しましょう」

「チャットに? あの、この前反論したら一斉に攻撃されたので」

「やってみます」

 奏介は祐太に席を変わってもらい、まずはキーボードで打ち込む。

『殺人予告の方、証拠も押さえたので脅迫罪で訴えますね』

 それをチャットに流す。暴言が流れていたチャットが一瞬止まる。

 恐らく、軽い気持ちで参加していた人達は逃げただろう。

『はぁ? 脅しかよ!?』

『死ねと言われて命の危機を感じました。このチャット欄は証拠として警察に届けさせて頂きます』

 チャット欄沈黙。荒らしていただろう数人も逃げたようだ。

「また荒らされたら冷静に対応した方が良いですよ。煽りで感情的になると向こうは喜びますから」

「は、はい」

 チャット欄がまた流れ出した。

『なんか変な人いなくなった?』

『よかった、チャットに入りづらかったしね』

 荒らしがいなくなって、ファンが集い始めたようだ。『フラクタデイズ』を語る場として機能してくる。

「す、凄い」

「まぁ、あいつらが戻ってきたらまた対応してください」

「! は、はい。ありがとうございます」

 席を変わったところで、ドアが開いた。

 振り返ると真崎と連火だった。奏介が戻ってこないので探していたのかも知れない。

「祐太、お前今度は何やって」

「ち、違う。おれはただ」

「祐太さんは無料で配った漫画を自主回収してたんですよ。連火さんのために」

「!」

 連火が驚いた様子で目を瞬かせる。

「へぇ、なるほど」

 真崎が感心したように何度も頷く。

「兄ちゃん、この前は、ごめん。おれなりにけじめはつけるから」

 連火舌打ち。

「まったく、そういう時はおれにも声をかけろよ」

 祐太の目が潤む。

「……うん。うん」

 もしかすると、仲直りが出来るかもしれない。彼ら次第なのだろうが。

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― 新着の感想 ―
[一言] やっぱり反省している人間相手に追い討ちは出来ませんし兄貴に殴られるという禊も済んでるので良い落ち着き方ですね。
[一言] 少し大人になれたんじゃないかな? これから成長して行きなさい By東京の大学に行くことになってビクついてる学生
[一言] 考えたらずだっただけで、積極的に害を及ぼそうとしてた訳ではないので回収しようとしてる点も含めて落としどころとしては良いのではないのかなぁ?
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