6話 不遇武器とパーティー
通知を確認してみると、運営から1週間後に第一回イベントを開催するという旨のメッセージが来ていた。
そのイベントはプレイヤー同士のバトルロワイヤルで、獲得したポイントを使って様々なスキルや武器を手に入れることも出来るらしい。
「面白そうだな、でもとりあえず今日はもう疲れたし、そろそろログアウトしよう」
―――
学校から帰ってすぐにゲームにログインする。
「昨日レベルが10を超えて自分の家もてにいれたことだし、イベントの練習も兼ねて今日は上級用のPK可能エリアに行ってみるか」
上級者エリアに行くための準備をしに自分の家へと向かう。家にはメニューを開いて家に移動するというアイコンをタップすると行くことが出来た。
もっと質素なのかと思っていたのだが、家の中にはアイテムボックスの他にベットやキッチンなどの設備が備え付けられており、かなり豪華であった。
「イベントが終わって時間が出来たら1日くらいここでゆっくりしても良いかもな」
今までに手に入れたアイテムをロストしないように、必要のない素材や装備などを次々と入れていく。
「どうやってこれって収納してるんだ? 明らかにボックスの大きさより入れた物の方がデカかっただろ」
現実であればかなり不思議な事であり、こんな事は不可能であると言い切れるのだが、ここはゲームの世界だ。
どうやって収納しているかなんて考えるだけ無駄である。どうせどういう原理なのか分かりやしない。そう思い、これはゲームの仕様だと割り切って考える事にする。
上級者用エリアに行く前に昨日のダンジョン攻略でHPポーションをかなり消費してしまっていたので、一度街によって補充しておく事にした。
ちょうど生産職の人が露店を開いているのを見つけることが出来た。NPCがやっている店から買うのも味気ないと思っていた所であったので、HPポーションをその店で買うことにする。
そこには様々な商品が並べてあり、もし何か良いものがあれば買おうと思っていたのだが、今の所特に自分に必要そうなものは無かったのでHPポーションだけを手にとり、商人の前に差し出す。
しかし、一向に相手が反応する気配がない。このままでは埒が開かないと思い、とりあえず声をかけてみる事にする。
「あのー、すいません」
「うわっ! お前いつからいたんだよ」
「えっ? 先程からずっと居ましたよ?」
「まぁ良いや。それ買うんだろ? 全部で500ゴールドだ」
HPポーションを無事買えたのは良かったのだが、なぜ相手が自分に気づかなかったのか分からない。
ここである事を思い出す。
「そういえば、ユニークスキルはレベルがあってレベルアップするごとに効能が上がるんだったよな?」
急いでスキルを確認すると〈存在感希薄〉がレベル3にまで上がっていた。これのせいで相手は自分に気づかなかったのだ。
「まさかこんな弊害があるとはな…。流石にこのままじゃやばいし、運営に文句言っとくか」
運営に〈存在感希薄〉は街の中とパーティーメンバーには効果が発動しないようにして欲しいという連絡をしておく。
―――
当初上級者エリアには1人で行こうと思っていたのだが、どのエリアに行くかの参考に攻略サイトを見ていると、「初心者エリアと違ってモンスターが強いから一人じゃ無理」とか「盗賊みたいなのがいてそれに襲われた」などという声が多かったので、ルインもパーティーを組んでいく事にする。
パーティーを組むために掲示板の前まで行き、そこでパーティーメンバーを募集している人達に声をかける。
「すまないが俺もパーティーに入れてくれないか?」
「おう、良いぜ。レベルと使用武器だけ教えてくれ」
「レベルは18で使用武器は銃だ。主にスナイパーライフルとハンドガンを使っている」
「銃? 悪いが他のパーティーを当たってくれ」
「銃だと何か問題があるのか?」
「問題しかないだろ。発砲音のせいでモンスターだけでなく、盗賊まで引き寄せてしまう。それに前衛をするにも後衛をするにも微妙だろ? 悪い事は言わないから今からでも違う武器に変えた方がいいぞ」
「そうなのか。ありがとう、他をあたってみるよ」
その後も何度かパーティーを募集している奴らに声をかけたのだが、同じような理由で断られてしまった。
みんなから今からでも遅くないから銃はやめとけという内容のことを言われたが、もちろんやめるつもりなどない。
「まぁ仕方ない。銃って不遇武器らしいし、誰もお荷物を連れて行きたくはないだろ。もし俺が逆の立場だったらそうするしな」
このままパーティーを組もうと頑張っても時間の無駄であると判断し、一人で上級者エリアへ向かう事にした。