5話 ダンジョン〜ボス戦〜
先に進んでいくと突如大きな空間が現れる。
そこには高さが10mはありそうな大きな扉があった。おそらく、この扉の中には、この洞窟のボスがいるのだろう。
「扉の奥からの圧が凄いな。このままじゃ勝てるかどうか怪しいし、もう一度準備してから行くか。」
道中での戦闘によって、ルインのレベルは15まで上がっていた。
レベルが上がったことによって獲得したステータスポイントを振ることにする。
「今はヘッドショットを決めれば威力は関係ないし、連射速度の方が大切だよな」
そう言って、今あった80のステータスポイントを全部速度へと振っていく。
そういえばレベルが10になった際に手に入れた〈魔力障壁〉というスキルがあったと思い出し、先程のスキルのようにデメリットがあると大変なので、今のうちに確認しておくことにする。
このスキルはプレイヤーの任意の場所に任意の硬さと広さの魔力で出来た障壁を発生させるスキルで、その硬さと広さによって消費MPの量が変わってくるようだ。
一度使用してみるが、〈圧縮弾〉のような使用後の硬直などのデメリットはなかった。
「これなら安心して使える。まだ防御系のスキルは手に入れて無かったしボス戦の前に手に入れれてよかった」
覚悟を決めて扉の中へと入っていく。
中はとても明るくランタンを持つ必要性は無かったので左手の装備をランタンからハンドガンへと変える。
そこには巨大な円形のスペースが広がっていて、真ん中には全長10mはあろうかという大きな蛇がいた。その蛇の頭は8つに分かれている。
「これは八岐大蛇だな。幸いまだ気付かれてなさそうだし、気付かれる前に一つ頭を潰しておくか」
ハンドガンから放たれた弾は、一直線に八岐大蛇の頭へと飛んで行き、頭を吹き飛ばす。
「よし、これで後7個」と思った瞬間に、先程吹き飛ばした頭が復活していた。
「うわっ! マジかよ……。もしかしてこれ全部の頭を同時に倒さないといけない系か」
頭を吹き飛ばしたことで八岐大蛇がルインに気づき襲いかかってくる。
そこまで動きは速くなかったので、避けれると思い、軽く横に避けた瞬間に八岐大蛇の口から毒のブレスが吐かれる。
これはまずいと感じ、瞬時に〈魔力障壁〉を使って防ぐ。
「危ねっ。本当にボス戦の前に防御系スキル手に入れれてよかったな」
ルインは八岐大蛇の攻撃を躱しながら頭を撃ち抜いていくのだが、8個全て撃ち抜く前に初めの方に撃ち抜いた頭が復活してしまっている。
このままではキリがないと思い、どうすれば良いのか考えようとするのだが、八岐大蛇の攻撃がそれを許さない。
ハンドガンで倒すことが出来ないのなら、もうルインに残された選択肢は少ない。
ダメ元でスナイパーライフルに持ち替えて八岐大蛇にヘッドショットを決める。
「ん? なんか頭の復活が遅くないか? もしかして属性のおかげで麻痺して復活が遅くなっているのか?」
これなら復活しきる前に全ての頭を撃ち抜くことができると考え、急いでスナイパーライフルを頭へと撃ち込んでいく。連射速度が上がっていたこともあり、無事に復活する前に八つの頭を破壊し終える。
全ての頭を破壊し終わると、八岐大蛇が苦しそうな声を上げながら、光の粒となって消えていく。
「やっと終わった・・・。一時はどうなることかと思ったが倒せて良かった」
ダンジョンをクリアした事によって、新たなスキルが手に入っていた。そのスキルをスキル欄から詳細をタップして確認する。
〈ヤマタノオロチ〉
【効果】銃から八つの毒の蛇が飛び出す。毒の蛇に噛みつかれたものは三十秒間猛毒状態になる。
【獲得条件】サポートアイテム無しにソロで八岐大蛇を倒す。
「ん? サポートアイテム? そんなものどこにあったんだ? 俺が道中で手に入れたアイテムなんて酒だけだぞ! ……えっ? もしかして酒がサポートアイテムなのか?」
まさか自分で難易度を上げてしまってきたとは思ってもいなかった。そのことを考えると、少しげんなりとした気持ちになるが、そのおかげで新たなスキルを獲得出来たのだし、よしとする事にした。
八岐大蛇を倒し終わると奥の方で魔法陣が輝きだす。おそらくあれに乗れば洞窟の外へと出ることが出来るのだろう。
一瞬そのまま魔法陣に乗って帰ろうとしたが、もしかしたらここでしか手に入らないスキルがあるかもしれないと考え直し、辺りを見回す。
すると、八岐大蛇が吐いた毒のブレスによって出来た毒の沼があった。
「道中に出てきた蛇の物よりは強い毒だろうし、あれに触れて毒状態になれば、さらに強い毒耐性をもらえるんじゃないのか?」
状態異常耐性系のスキルはいくらあっても困らないので、出来るだけ取っておきたいとは思うのだが、一つここで問題がある。
それは、あの毒でどれくらいのダメージを受けるか分からないという事である。一応HPポーションはまだ余っているが、それだけでは足りない可能性もあるのだ。
「鑑定とかそういう系のスキルが欲しいな」
そう言ってスキルポイントで獲得可能なスキル一覧を開いて、その中に自分の望むスキルがないか探し始める。
少しすると、まさに自分が望んでいた通りの〈鑑定〉というスキルがあった。
この〈鑑定〉というスキルではプレイヤーの情報は見ることが出来ないが、運営が作り出した自然のものの情報なら見ることが出来る。
これで毒沼を鑑定してみる。
〈八岐大蛇の毒〉
【情報】八岐大蛇の体の中で生成された猛毒 毎秒30ダメージ 持続時間10秒
道中で手に入れた〈毒耐性・中〉もあるので、今の自分の体力ならば300ダメージくらいなら何とかなると思い毒沼に足を踏み入れる。
そして、その踏み入れた足を外に出し、毒のダメージを喰らい終わると、HPポーションで体力を回復するといったサイクルを十数回ほど繰り返すと〈毒耐性・強〉というスキルを手に入れることが出来た。
このスキルでは毒によるダメージを八割カットすることが出来るらしい。
「よし! 予想通りの自分が欲しいスキルを手に入れることが出来た。もうすることもないし帰るか・・・。いや帰る前に一応酒だけ鑑定しておこう」
〈日本酒〉
【情報】蛇がこれを飲むと必ず10分間は目が覚めない。
「やっぱりこれがサポートアイテムか」
なんだか疲れが一気に出てきた。なので、さっさと魔法陣に乗り、洞窟の前へと帰ってくる。
もう今日は疲れたのでログアウトしようかと思った瞬間に通知音が鳴り響いた。