4話 ダンジョン〜道中〜
洞窟に入ると中は暗すぎて周りがよく見えない。
「流石にこれはまずいな」
左手のハンドガンをランタンへと持ち替える。すると、周りが照らされて先程までとは打って変わってよく見えるようになった。これならばいつ敵が出てきても問題ないと思い、先へ、先へと進んで行く。
少し進んだところで、何匹かの蝙蝠がこちらを目掛けて飛んでくるのが見えた。一匹ずつ冷静にヘッドショットを決めて撃ち落としていく。
ここであることに気づく。銃の連射速度が明らかに上がっているのだ。それに弾の速さが速くなって格段に威力が上がっている。
「速度を上げると銃の連射速度まで上がるのか。銃の性能で決まるのかと思っていたんだが違うみたいだな。それに弾の威力が上がっているのは物攻を上げたからか?」
蝙蝠の群れが襲いかかってきては倒すということを何度か繰り返していると、目の前に別れ道が現れる。
「うーん、取り敢えず左から行くか」
左の道を進んで行くと特に何もなく、行き止まりだったので次は右の道へと向かう。
右の道では奥に宝箱があったのだが、目の前に宝の守護者としてゴーレムが立っている。どうやら宝を取るためにはこのゴーレムを倒さなければならないようだ。
「わざわざ守護者がいるって事はかなり良いお宝だよな。絶対手に入れてやる」
流石にゴーレムの頭は撃ち抜けないだろうとは思うが、ダメ元で撃ち込んでみる。放たれた弾丸は予想通りゴーレムの頭を撃ち抜くことなく、弾き返されていた。
「このままでは火力が足りないな。何かいいスキルが無いか探すか」
ルインはスキルを獲得する為にスキルショップを開いても問題が無いほど安全な場所まで下がることにする。
「よし、こちらを追いかけて来る様子はないな」
スキルショップを開いて、手頃なスキルポイントで入手出来て、使い勝手が良さそうな物を探して行く。なかなかいいスキルを見つけられずに10分程過ぎた頃、良さげなスキルを発見する。
ルインは〈圧縮弾〉という攻撃系のスキルを獲得する事にした。このスキルの効果は弾の速度が上がり、その上、弾の大きさと威力が3倍になるというものである。使用したスキルポイントも5ポイントとそこそこ少なく、いい買い物だったと言えるだろう。
もう一度ゴーレムがいた場所まで戻っていく。ゴーレムがこちらに向かって襲いかかって来るが、その前に圧縮弾をゴーレムの頭へと命中させるとゴーレムが吹き飛んでいった。
「かなり威力高かったし、流石にこれは倒せただろ」
そう思い、ゴーレムが吹き飛ばされていった方へと目をやる。
ルインの予想とは裏腹にゴーレムにほとんどダメージは与えられていなかった。どうやら倒す事は出来ない設定になっているようだ。
倒す事は出来なかったが、気絶させる事は出来ていたので、その隙に宝箱の中身を抜き取る。
「これは……水か? いや何か変な匂いがするな」
宝箱の中には水瓶に入った透明な液体があり、その液体からはツーンとしたアルコールの匂いがする。すこし舐めてみると、「苦い……」といった感想しか出てこなかった。
おそらくこれはお酒であろう。お酒が好きな人にとっては最高の宝物なのだろうが、未成年のルインにとっては何も嬉しくない。
「わざわざスキルを獲得してまで手に入れたのが酒かよ・・・。俺はてっきり強い防具とかが入ってると思って期待してたのに・・・」
もしかしたらこのお酒はダンジョンをクリアする為の必須アイテムかもしれないと自分で自分を納得させる。
気を取り直して最後に残った真ん中の道を進んでいく。
真ん中の道を進んでいくと、全長2mくらいの首が三つに分かれた蛇が現れる。
ハンドガンから弾を放つのだが、蛇の口から出る毒のブレスによって溶かされてしまい、蛇の体まで届かない。
何発か撃ち出してみるが、全て毒のブレスによって溶かされてしまう。
「厄介だな。でも〈圧縮弾〉なら溶かされずに撃ち抜けるだろう」
三つの頭の内の一つに目掛けて〈圧縮弾〉を放つ。すると、その弾は毒に溶かされることなく相手の頭を撃ち抜いた。
そこまでは良かったのだが、ここである問題が生じた。残り二つの頭が吐くブレスを避けようとするのだが、体が動かない。
これはおそらくスキルを放った反動であろう。先程スキルを使った際は、使ってすぐに動こうとしなかったため気づかなかったのだ。
1秒経つか経たないかくらいで動けるようにはなったのだが、回避が間に合わず、ダメージを受けてしまう。
攻撃を受けてしまったせいで、毒状態になってしまった。毒消しなどは持っていないので、体力が少なくなって来ると、忘れずにHPポーションを飲む。
「〈圧縮弾〉を撃つ際は気をつけないとな。使うタイミングを間違えるとすぐに死んでしまう」
残りの頭二つを片付るためには〈圧縮弾〉を撃つのが1番なのだが、撃った反動の間に残りの一つの頭から毒のブレスをもう一度食らってしまうだろう。
「流石にインベントリからハンドガンもう一丁取り出してる余裕は無いしな。体力はまだ200ほど残ってるし、もう一発くらいなら耐えられるか?」
覚悟を決め〈圧縮弾〉を蛇の頭目掛けて放つ。ルインの予想通り、一つ頭を処理する事は出来たが、残りの頭から毒ブレスを受けてしまった。
スキルの反動が消えると、すぐさま〈圧縮弾〉を最後の蛇の頭へと目掛けて撃つ。
ようやく蛇を倒す事が出来た。残り体力を確認するともうすでに50程しか残っていなかったので、急いでHPポーションを飲む。
体力が満タンになったところで、スキル一覧を見ると〈毒耐性・中〉を手に入れる事が出来ていた。このスキルは状態異常の毒の効果を5割カットしてくれるらしい。