2話 初めての戦闘
少しの間森の中を歩くと、ゴブリンが三体歩いてるのが見えた。
「初めての戦闘の相手としてはちょうどいいだろ」
そう言って近距離戦に対応するためにスナイパーライフルからショットガンへと装備を変更する。
ショットガンを構えるとレーザーポインターのような赤い線が出る。普通に銃を撃っても当たらないのでサポートとしてのものだろう。
「ゴブリンにはまだ気付かれてなさそうだな。ならこのまま・・・」
ゴブリンの頭に照準を合わせ引き金を引く。すると頭の上のゲージがみるみると消えていき光の粒子となって消えていく。
今度はショットガンを放った音で残りのゴブリンに気づかれるかと危惧したがどうやら存在感希薄によって音が軽減され気付かれなかったらしい。
残りの二体も同じように倒していく。
こうして初めての戦闘は終了した。まぁ戦闘というよりは動く的を狙って撃つ練習に近かったが……
「初めての戦闘がこれか・・・。少し楽しみにしてたのに・・・」
気分を切り替えて、届いていたレベルアップの通知を確認する。レベルが上がるとステータスポイントとスキルポイントが貰えるみたいだ。
スキルはある獲得条件を達成しないと獲得できないものも有るが、スキルポイントを使って取ることができるスキルもあるらしい。
まだ目指す戦闘スタイルが決まり切っていないのでとりあえずステータスポイントもスキルポイントも使う事は控えておいた。
インベントリを見てみるとさっき倒したゴブリンの素材が入っていた。どうやら倒した敵の素材は直接インベントリに送られるらしい。
その後も何種類かの銃を試しながら周りの敵を倒していく。そして、いくつか銃に関して分かったことがある。
まず弾が当たる部位によって与えるダメージが異なるらしいということだ。特に心臓と頭に当たった場合は一撃で倒れる。
二つ目はレーザーポインターの線は何か物にぶつかるとその時点で途切れるらしいということだ。
三つ目はレーザーポインターは消せないということだ。流石に撃たれる場所が分からなければ剣士などは躱せないので、武器の強さの調整として付いているという面があるかららしい。
分かったことがあったのは良かったのだが、それ以上にたくさんの疑問が生まれた。なので少し銃について攻略サイトで調べることにしてみた。
調べてみると、「レーザーポインターの光他のプレイヤーから見えるから不意打ちすらできないから銃弱すぎ」「発砲音デカ過ぎてすぐ周りに気づかれる」といった内容のコメントで溢れかえっていた。
どうやら銃は不遇武器とされていて、あまり使い手が存在しないらしい。みんな遠距離から攻撃したい場合は魔法を使った方が強いという意見で落ち着いていた。
もう一つ調べて分かったのはレーザーポインターの光の長さはその銃の有効射程距離に等しいということだ。
しかし、またここで新たな疑問が生まれる。有効射程距離を過ぎた弾丸はどうなるのだろうかということである。すぐに消滅するのかそのまま消えずに飛んで行くのかでは使い勝手がかなり違う。
消えずに飛んでいくのであれば銃は練習さえすれば、レーザーポインターの光が見えてから避ければ良いと考えているプレイヤーが多い為、警戒範囲外から頭を打ち抜くことができるのだ。
早速実験をしてみることにした。
自分が持っている銃の中で1番有効射程距離が短いのはハンドガンでその距離は十メートルだった。約十五メートル先の木に向かって銃を放つ。
木の側によっていって見てみると銃弾の跡が残っていた。これで練習さえすれば銃の問題点の一つを消すことができるということが証明された。
それに、俺はユニークスキルの存在感希薄によって発砲音の問題はほとんどなかった。スキルのレベルが上がればより一層その問題は解消されていくだろう。
俺は二つある銃の大きな問題点の内一つは元々問題ではなく、もう一つの問題点も努力によって無くすことができるということだ。
こうなれば銃は不遇武器などでは無い。俺だけにしか使えない最強武器となりうるのだ。
「想像しただけでもやばすぎる。もう俺銃使うしかねぇだろ」
早速スナイパーライフルでレーザーポインターのサポート無しに狙ったところを撃てるようにするため練習をすることにした。
しかし、このエリアではモンスターも出てくるので集中してスナイパーライフルの練習をすることがが出来ない。どうしようかと考え込んでいると、街に訓練場があることを思い出した。
訓練場では一人で武器の練習をすることもできるが、他人と一緒に練習したり模擬戦闘を行うことも可能である。
今回は一人でルームを借りて練習する事にした。
ひたすら2時間ほどスナイパーライフルを打ち続けているとかなりコツを掴み、止まっている的ならば狙った場所に弾が飛ぶようになって来た。しかし動いている的に当てるのはかなり厳しい。
これでは動いているプレイヤーにヘッドショットを決めることなど到底出来ない。まだまだ練習が必要だとは思うものの、時刻を確認すると既に夜の12時を回っていた。
「時間もかなり遅いし、明日も学校があるからとりあえず今日はここまでにしておくか」
そう言ってゲームからログアウトするのだった。