14話 闘技場
今日はこの間行く事が出来なかった闘技場へとやってきていた。
「やはり解放されたてという事で、たくさんの人がいるな」
空いている対戦ブースへと入ると、今対戦ブースにいる人の名前とポイントが表示された画面があった。
その中からプレイヤーを選んで対戦の申し込みを行い、相手が受理すれば、戦闘マップへと転移される仕組みのようだ。
「正直誰でもいいんだが・・・。とりあえずポイントが真ん中くらいの奴選んどくか」
そう思い、相手を選択しようとしたのだが、その前に別の人物から対戦の申し込みが自分宛に送られてきていた。
別に相手は誰でも良かったので、ルインはそれを受ける事にした。
承諾のボタンを押すと、戦闘マップへの転移が開始される。転移が完了し、辺りを見回して、マップを確認する。
闘技場のマップは円形で、範囲はかなり狭く、何の遮蔽物もない。
円形になっているフィールドの上には、観客席がついている。結界が張られているので、フィールドの中の攻撃は外へと出ずに、安全に観戦できる仕組みとなっているようだ。
「まぁ、よくあるタイプの闘技場だな」
昨日使った感触としては、ガトリングガンは狙いをつけるのが難しく、重くて自由に振り回せないので多対一には向いているだろうが一対一には向いていないという感じであった。
その事から両手にハンドガンを装備したいつものスタイルで行く事にした。
お互いの準備が完了すると、真ん中に立っているNPCの審判から試合開始の合図がなされる。
相手はこのゲームを始めてから初めて戦う魔法使いであった。
今までにも魔法使いを倒した事はあるが、不意打ちによるものが多く、一対一で戦った事はなかったのだ。
戦闘開始の合図と共に相手が片腕を上にあげ、相手の頭上に大きな火の球が現れる。
相手が魔法を放つよりも先に頭を撃ち抜けると思い、隙だらけの相手の額目掛けて銃を放つ。
しかし、その弾は相手の額へと到達する事はなかった。
流石に相手も魔法を放つまでノーガードという訳ではなく、自分の目の前に見えない壁を張っていたのだ。
その壁はこの間ルインも獲得した〈ミラー〉で出来ている壁であり、ルインが放った弾丸を弾き返し、今度は逆にルインへと牙を剥く事になった。
跳ね返ってきた弾丸を軽く躱すと、そこへ相手の用意していた魔法が放たれる。
相手の放った火の球はかなり大きく、どう頑張っても避けれそうにない。
そう判断し、ルインの最強の攻撃である〈ヤマタノオロチ〉で弾きかえそうするのだが、火力が違いすぎた。
相手の攻撃は〈ヤマタノオロチ〉をものともせず突き進み、そのままルインに直撃する。
その衝撃でルインは吹き飛ばされ、壁へと叩きつけられた。
「これが魔法と銃の差か。そりゃネットで魔法の方が断然マシとか言われるな」
今の攻撃だけで既にルインの体力は四分の一程しか残っていない。
「まぁ不利な状況の方が燃えるってものだな! 不遇武器を使ってて、その上もう体力も少ない状況とか、ここから勝てればカッコ良すぎるだろ」
もうこれ以上ミスが許されない状況、そう考えるだけでゾクゾクしてくる。
相手から次々と放たれる魔法を全てギリギリの所で躱して、相手の懐へと潜り込む。
「魔法使いは接戦戦は苦手だろ?」
絶対に躱せない距離から〈ヤマタノオロチ〉を放つ。
八匹の蛇が同時に魔法使いへと襲いかかるが、殴りと蹴りだけで全て処理されてしまった。
「魔法使いは接近戦が苦手なんて誰が決めた? 俺はどちらかというと接近戦の方が得意だぞ?」
そう言って、相手の拳は容赦なくルインへと襲いかかる。〈極限集中〉を使って避け続けるが、それも長くは続かない。
〈極限集中〉の長時間使用によって自分の体にダメージが入り始めたのだ。
これ以上使うと、そのダメージで自分が倒れてしまうので、使用をやめた瞬間に相手の拳がルインを捉える。
―――
目を覚ますと、対戦ブースへと戻されていた。どうやらルインは対戦に負けたようだ。
「格の違いを見せつけられた試合だったな・・・。まさか初戦からあんな強いプレイヤーと当たるとは、まぁ上には上がいるってことだな」
普通の人なら、あそこまで完膚なきまでに叩きのめされれば落ち込むのだろうが、ルインはどちらかというとワクワクしていた。
何故ならルインは自分が勝てなかった相手に勝つことができるようになる瞬間が何よりも好きだったからだ。これには自分よりも圧倒的強者が必要である。
「まだまだやり込み甲斐があるな。とりあえずの目標はさっきの魔法使いだ」
覚えておこうと思い、相手の名前をチェックする。相手はガイルという名前であった。
もしかしたら、先程のような強い人物と戦えないかと思い、闘技場でこの後数試合したが、望むような人物とは対戦出来なかった。
少しがっかりしながら外に出ると、通知音が鳴り響く。どうやら新たなスキルが手に入っていたようだ。
〈逆境〉
【効果】逆境であれば、逆境であるほどステータスが上がる
【獲得方法】圧倒的逆境でも諦めないどころか興奮しだすような頭のおかしいメンタルを持っていること
「これ完全に俺ディスられてね? これじゃ俺、完全に頭のおかしいやつじゃねぇか!」
そう激昂するが、表示されている画面の文字は変わる事はない。
歩き出そうとすると、また通知音が鳴る。今度は何だと若干キレ気味で確認すると、「この間のお礼がしたいのですが、今から時間ありますか?」という真白からのメッセージであった。
今から特にすることがあった訳ではないので、「問題ない」といった旨の返事を送る。
その後少しやり取りをして、広場で待ち合わせをする事になった。
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