11話 第一回イベント③
狙撃ポイントを探す為に歩いていたのだが、丁度いい場所を見つける事が出来ず、諦めて近くにある高めの木に登って、その上から狙撃することにする。
現実ならば、木を登っている間に倒されてしまっていたかもしれない。しかし、ここはゲームの世界で能力値も強化されているので、十秒程で頂上まで登り切る事が出来た。
少し落ち着く事ができ、他のプレイヤーがどれくらいの数のプレイヤーを倒しているのか気になっていたので、倒したプレイヤー数ランキングを確認してみる。
ルインも此処に来るまでの道中でもかなりのプレイヤーを倒していたので、現在九位にランクインしているのだが、一位のプレイヤーの倒している数は規格外だ。
既に五百人以上のプレイヤーを倒しており、その数はルインが倒したプレイヤー数の約二倍だ。
「倒しすぎだろ、えげつないな・・・。よし、俺ももうひと頑張りするか」
ここから見える範囲にいるプレイヤーをどんどんと倒していく。
まさか、木の上から銃で撃ち抜かれるなんて皆想像していないのか、それとも〈存在感希薄〉によるものなのかは分からないが、皆放たれた弾に気づかずにそのまま頭を撃ち抜かれて死んでいく。
また新たなプレイヤーを見つけたので、スコープを覗き込むと、そこには年は高校生くらいの外国人の様な容姿の金髪の美少年がいた。
「うわっ! かなりの美少年だな」なんて事を呑気に思いながら、引き金を引こうとすると、スコープ越しに目があった気がする。
これはやばいと直感し、急いで木の上から降りて逃げ出す。しかし、運の悪いことに逃げた先にもプレイヤーがいた。
そのプレイヤーは綺麗な桃色の髪をツインテールに結んでおり、活発そうな見た目をした可愛らしい見た目の少女だ。
その少女の手には漆黒のハサミの様な武器が握られている。しかし、そのハサミには普通のハサミと違って外側にも刃がついている。恐らく剣の様な感じでも使えるのだろう。
「はぁ、まじかよ・・・。今の段階でオリジナル武器を持ってるってことはかなり強いよな? もうほんと嫌なんだけど・・・」
正直に言うとここから直ぐに逃げ出したかったが、お相手さんはここから逃げ出させてくれなさそうなので、スナイパーライフルからハンドガンへと武器を持ち替える。
相手が斬りかかってくるのでそれを軽く躱す。軽く避けれた事を考えると、さっきの攻撃は様子見であったのだろう。
こちらも様子見で何発か相手に向かって弾を放つが、その弾は全て叩き斬られてしまった。
相手がハサミを振り下ろしてくるので、それをいつも通り軽く躱そうとすると、相手のハサミが輝き出し、一気に相手のハサミの速度が上がる。
〈極限集中〉を使用し、ギリギリの所でそれを躱す。
しかし、躱したのは良いものの、躱すのに精一杯で足下への注意が散漫になっており、足下にあった窪みに気づかず少し躓いてしまった。
当然相手がその隙を見逃してくれるはずもなく、容赦なく斬りかかって来る。これは〈極限集中〉を使っても躱せないと判断し、〈圧縮弾〉を使ってハサミを弾き返す。
相手はその弾き返された勢いを逆に利用し、回転する様に斬りかかってきた。
スキル使用後の硬直で動かずにいるルインをその斬撃が容赦なく襲うが、ハサミがルインの身体に達する前に硬直が解けたので、地面に倒れ込む様にする事で間一髪その攻撃を避ける事ができた。
急いで立ち上がり、牽制の為に弾を何発か放ち、急いで距離を取る。
相手が距離を詰めようとしてくるので、弾を撃ち続け近づけさせない様にするが、事もなげにその弾丸を躱し、ルインの懐へと潜り込んで来て、突きを放つ。
それを横へのステップで避けて反撃しようとすると、予想外の攻撃が飛んで来た。なんと、相手がハサミの片側を固定し片側だけを開いたので、横からの攻撃を受けたのだ。
それを片方の銃を犠牲にして止める。そして残ったもう一方の銃で隙だらけの相手の額を目掛けて二発の弾丸を撃つ。
一発は〈魔力障壁〉で防がれてしまう。もう一発は命中するかと思ったのだが、首を横に捻る事で躱されてしまい、ただ髪の毛に掠っただけだった。
しかし、ここで驚くべき事が起こる。突然相手の体力バーが無くなり光の粒となって消えていったのだ。
何故こんな事が起こったのが分からないが、可能性としては一つだ。
「もしかして〈一撃必殺〉が発動したのか? てか髪の毛に当たり判定ってあったんだな・・・」
このまま此処に留まっていればプレイヤーに見つかるので、ここから早く移動しなければと思った時にはもう遅かった。
目の前で起こった事態に困惑している内に何者かがルインの後ろへと迫って来ていたのだ。
首が斬り落とされ、そこで一旦意識が途切れる。
次に目を覚ました時にはイベント前にいた始まりの街の広場に転送されていた。