007 仕組まれた陰謀 Ⅶ
「さて、帰るとするか」
祐斗はしゃがみ込み、朱音を見る。朱音は、首を傾げてボーッと、祐斗の事を見ていた。
「ん?」
「後ろに乗れ……。ここから上へは俺が飛ぶ」
「分かった」
朱音は躊躇せずに祐斗の背中に体を預け、祐斗はしっかりと朱音の体を握りしめると、呼吸を整え、足のバネを生かし、一気に天井に空いた穴に向かって飛ぶ。そして、左右に片足で跳びかい、一層ずつ上がっていく。空気がさっきより軽くなっていく。跳んでいく途中、どこからか誰かが戦っている音が聞こえた。
(まだいるのか……)
祐斗は音だけ聞き取り、そのまま地上へと出た。洞窟の穴の向こう側には太陽の光が射し込んでいる。
朱音を背中から降ろすと、二人は光りの指す方へと歩いていく。
ルデン山から出た時、空はまだ明るかった。太陽はだいぶ南を少し通り過ぎ、西の方へと傾いている様子だ。
「この道を抜けたところに【始まりの街】イスミシティがある。今日は一応、俺が止まっている宿で休むとしよう。だが、その前に街で昼食を取らないとな」
祐斗が言う。
「イスミシティ……」
朱音は眉をひそめ、険しい表情をする。昔の記憶が少しずつ蘇る。自分の過去、ここでの暮らし、全てが胸の奥へ突き刺さってくる。
朱音は服の胸元の部分を強く握りしめ、自分の平常心を保たせようとする。
二人は山を下り、森を抜け、イスミシティへと歩いて行った。