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アーティシャル・インジェンス・リベンジ  作者: ゴリラ・ゴリラ・ゴリラ
天才物理少女篇
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006  仕組まれた陰謀 Ⅵ

「仲間に売られて憎んだり、恨んだりと、悔しくはないのかって聞いているんだよ」


「それは……最初は憎んでいたわ。でも、いつかこうなるってことは分かっていた」


「だったら……」


 祐斗は、少し悲しげな表情をする。


「でも、いいの。今は、一人の方が楽だから……」


「そうか……」


 少女は自分の話を言い終えると、祐斗への警戒心を解いたのか気持ちが緩み、肩の荷を落とした。


「これから先もお前は、この場所で一人寂しく生きていくつもりか? この世界が終わりを迎えるのはいつか分からない。それでもいるつもりか?」


「うん。私はここにいる」


 少女は微笑みながら答えた。


 その瞳の奥には、寂しさや人を信じる目の輝きは無くなっているような気がした。この薄汚れた空間で日を追うごとに彼女の心は蝕まれている。それに目の前にある大きな門の事も気になるのだ。


「そうか。だったら、俺と組む気は無いか?」


「え?」


 祐斗はいきなり少女を誘った。断られることが分かっている前提でのことだ。しかし、自分と同じような境遇にいる少女を無視することは出来なかった。


「無理は言わねぇ。だけどな、このままうだうだとこんな場所でいる奴の方がかっこわりぃ。俺みたいのが言う資格はないかもしれないが、もう一度だけ、数週間でもいい。俺と組んでくれないか?」


「私は……」


「数週間だけでいいんだ。もし、時間が経つにつれて嫌になったらその時は、ここに戻ってくればいい。それまではお前の事を俺が守ってやる。どうだ?」


 祐斗の提案に少女は悩んだ。


 自分の目をしっかり見ながら、しっかりと話し相手になってくれる。この男を信用してもいいのだろうかと、自分の心の中に問いかけているのだ。今までの仲間は、自分の話など全く受け入れてくれる人たちではなかった。現実世界でもそうだった。自分は他の同級生たちと違う。彼らが考えている事とは真逆の事を少女は考えていた。そのたびにトラブルを巻き込むことが多かった。


 本当にそんな自分を受け入れてくれる人間などいるはずがない。


(本当に信用していいの?)


 少女は、未だ答えが出せない。


 もし、祐斗が犯罪者だったらどうする。また、自分は裏切られて捨てられるだけの存在になってしまう。だが、祐斗の行っていることが嘘を言っているようには見えない。祐斗から漂う不思議な感覚が自分にそう伝わっているからだ。


「分かった。あなたの言う通りにしてみる。本当に裏切ったりしないよね?」


「しねぇーよ。仲間を裏切ったら何だっていうんだ! 俺はそんな事しねぇ!」


 祐斗は、ハッキリと言い切った。


 仲間を裏切る事。それは悪い奴らと同じ行為だ。仲間というのは、互いに助け合って生きていくという事だ。二人は、そもそも仲間がいない独り身だ。時にはぶつかり合ったりするだろう。だが、その痛みを知らなければこの先やっていけないのだ。


「俺の名前は、相模祐斗。十六歳だ!」


「私は、山城朱音やましろあかね。十五歳」


 二人は互いに自己紹介する。


「よろしくな!」


「よろしく……」


 祐斗と対照的に朱音は、自信なさそうな声で返事を返す。


「それよりも目の前に見えるこの大きな門は何だ?」


「知らない。私もこの先の向こう側に入ったことが無いから」


「そうか……」


 それが正しいのかもしれない。分からないところにむやみに飛び込むことは、勇気と違う。ただの自殺に過ぎない。


 しかし、龍や剣、獣の絵が刻まれた門を見ると、なんだか不吉な予感しかしない。自分の獣の感がこれ以上足を踏み入れるなと言っているようだ。


「やめておこう。一度、地上に上がって街に帰った方が良さそうだな」


 祐斗は、十分に状況を把握した中での判断を下した。


「分かった。あなたがそう言うなら私は従う。私もここはいかない方がいいと思っている」


 朱音も頷く。


「じゃあ、地上に上がるとするか……」


 祐斗がそう言うと、二人は地上に上がる準備を始める。


 地下十一層のモンスターの生存率は半分以下。すぐに突破できるだろう。問題は、十層から一層まで上がる道のりだ。


 祐斗は、ここに来るまでに一気に地下十層まで飛び降りてきた。帰りもショートカットで帰るとなると、先程の冒険者のパーティーに遭遇するかもしれない。


(あそこの壁を飛び交って上ることは出来るか?)


 祐斗は、穴の壁を伝って一気に駆け上がろうと考える。

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