26.報復
青年は、常務の部屋へ向かっていた。
歩きながら、少女のことを考えている。
少女の素性を知っても、変わらずに接することが出来た。
青年には、そのことがとても嬉しい。
常務の部屋の前まで来た青年は、ドアをノックする。
部屋に入ると、常務は、ノートパソコンを開いて応接セットに座っていた。
青年が、勧められて長椅子に腰を下ろすと、常務がノートパソコンを操作し始める。
「朝から気味の悪いものを見せるが、悪く思わないでくれよ。無理しなくていい。もし見られるようなら、これを見てくれ。宮崎のなれの果てだ。」
常務は、そう言うと、ノートパソコンを青年の方に向けた。
画面を見た青年の目が細まり、苦い表情が顔を覆う。
そこには、人だったものが散らばっていた。
血の海の上に、幾つかの離れ離れになった人体が転がっている。
青年の見覚えのある顔が、目を閉じ、口を開けたまま息絶えていた。
遺体には、無数の傷や打撲痕があった。
その断面には、血のりが多量に付着している個所と、ほとんど何も付いていない箇所がある。
血が付いていない箇所は、死んでから切断されたものだ。
だが、血のりが付いている個所は、そうではない。
それは、生きたまま体を解体されたことを物語っていた。
死に顔が、断末魔の表情でないのは、激痛が意識を奪い去ったからだろう。
「宮崎・・・」
苦い表情の青年が呟くと、常務はノートパソコンを自分の方に向けた。
「大丈夫か」
常務が青年に聞いた。
「はい、大丈夫です。」
青年の気分が悪くなっていないことを確認し、常務が話し始める。
「この動画には、続きがある。犯罪組織は、この国にも報復すると言っている。単なる逆恨みだが、それは、我々とは全く関係がない。奴のいた派遣会社でも、親父殿がねじ込んで無理やり出張扱いにさせられたらしいが、念のために、休暇願を出させていたということだ。出張費も後払いだったと聞いている。要するに、奴は休暇を取って観光に行っただけということになってる。親父殿が亡くなってくれたおかげで、皆、めでたく我関せずとなった訳だ。」
常務は、ここまで話し、青年の顔を見た。
「はい」
青年が頷くと、常務は続けた。
「まあ、これは、くれぐれも我が社とは、関係のないことだ。それだけは、肝に銘じておいてくれ。」
「はい、承知いたしました。」
青年が返事をすると、常務も頷いた。
「話は、終わりだ。嫌なものを見せて、すまなかったね。」
そう言って、常務はノートパソコンのディスプレイを閉じ、立ち上がった。
青年も立ち上がり
「失礼します。」
と言って、一礼し、部屋の出入り口に向かって歩き出す。
歩いていく青年の頭の中では、既に、宮崎の無残な姿は消え去っていた。
だが、一つだけ、常務の言ったことが、妙に引っかかっている。
「この国にも報復する」
ただ一つ、そのことだけが




