24.偏見
黒孩子についての知識が、青年には、ほぼ欠如していた。
黒孩子という言葉を聞いたことはあるが、実際に知っていることは、戸籍が無いらしいという程度のことだけだ。
知らない分だけ、黒孩子に対する偏見も少ない。
だから、少女が黒孩子であることを知っても、その見方には、ほとんど変化がなかった。
だが、これから勉強を教える上で、どのような身の上なのかを知る必要があると、青年は思った。
自宅のインターネットで検索をすると、無数のサイトが表示される。
青年は、客観的に書かれてあると思われるサイトをクリックした。
政府の福祉政策の縮小による犠牲となり、戸籍を持たずに生きていかざるを得なかった者達の悲劇が、そこには書かれていた。
幼い者達が心無い者の手によって踏みにじられていく画像が、その記事により悲劇性と真実味を与えている。
痛ましさのみが青年の心を占め、握りつぶされそうな苦しさが、その胸に生まれていた。
青年には、その記事を第三者の客観的な目で読むことが出来ない。
少女という存在が、それを許さなかった。
自分に向けられた微笑みは、それまで積み重ねて来た過酷な歩みの上に、創り上げられたものだったのか。
青年は、あの日の涙に隠されていること、そして、その意味を知った。
少女のことを思う青年の心は、強い衝撃に見舞われたように、しばしの間、その機能を停止し、現実と虚無の狭間を彷徨う。
青年は、目に熱いものを溜め始めていた。
少女は、今この時も、黒孩子に対する惨たらしい偏見に晒されているのか。
彼の国の少女が、青年の中で物憂げに微笑んでいる。
彼女は、どのような境遇で生きていたのだろうか。
彼女もまた、黒孩子だったのか。
青年は、何も知らない。
ただ、考え続けてしまう。
青年の目から、溜まっていた熱いものがこぼれる。
自分は、これからも今までと変わらずに、少女と接していけるのだろうか。
明日は、少女と約束してから、最初の週末だった。




