マリア
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イヴァンにつれられていった先は、ボロボロの、小さなバラックだった。
板金でつぎはぎのように覆っている。所々、空いた穴を薄汚れ、黄ばんだ布で覆っている。カエデがそれを見ていると、ふと、気づいた。
「あれ、あの穴の周り、焦げてね?」
一つあいた、大きめの穴、その周囲には、黒ずみ、煤けた部分がある。
イヴァンがカエデの指さす方を向き、それを見ると、一瞬だけ表情を曇らせた。
「あぁ、あれは、この前のマフィアの抗争で、ね……」
そこでカエデは思い出す。少し前にスラムを牛耳る、二つのグループが、構成員同士のいざこざから大規模な銃撃戦にまで発展したことを。
そのときに使われたグレネードが、バラックの壁を壊したというのだ。
「なるほどね………」
カエデがその光景を見ながら考え事をしていると
「おにいちゃん!!今帰ってきたの!?」
後ろから叫び声がした。
振り替えると、まだ10代にも満たない少女が駆け寄ってきていた。黒い目に、黒髪。アジア系だろうか?カエデと同じだ。
「マリア、ただいま。」
イヴァンが兄の顔になる。柔らかな微笑みを浮かべ、少女……マリアに抱きつかれ、頬にキスをする。
「いい子にしてた?」
イヴァンが微笑みながら尋ねると、花が咲くような笑みが返ってくる。
「うん!いい子にしてたよ!“包帯も自分で替えたし”!」
イヴァンはそれを聞いてマリアの頭を撫でる。
「そうか、偉いぞー。」
その光景を、カエデは痛ましい目で見ていた。
少女の、マリアの右足、膝から下は
“木を削って作られた棒だったから”
イヴァンの妹は、マフィアの抗争で起きた爆発……バラックに穴を開けた手榴弾により足を失っていたのだ。




