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アイドルの裏の顔?  作者: 中腸腺
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ヒミツのおしごと?

初投稿です。よろしくおねがいします。

「みんなぁー!今日はきてくれてありがとぉー!楓。頑張って歌うから応援してねぇー!」

コンサート会場に声が轟く。

コール&レスポンス。1人のアイドルに20000人を超えるむさ苦しい野郎どもが沸き立つ。ステージに立つのは黒髪を二つ結びにした幼さの残る顔立ちの少女、トップアイドルの長塚楓だ。彼女が歌を紡ぐたび会場が爆発する。楓は彼女の曲のなかでも特に人気の数曲を歌いあげ、ハートマークつきの笑顔をたっぷり振り撒きながら舞台袖に帰っていった。

 

 「っあーつっかれたぁーまじなんであんな野郎どもに

にこにこしなきゃなんネーンだクソが!!」

「まぁまぁ、楓、そんなこと言わないで。それがアイドルの仕事なんだから。」

数分後、楓はマネジャーの運転するアルファードの中で盛大に愚痴をこぼしていた。先程までの甘い雰囲気はどこへやら、ファンが見たら卒倒間違いなしである。怒りで。

「と、言うか、楓。あなたのファンってイケメンばかりじゃない。何が不満なのよ。」

そう、楓のファンは基本的に顔面偏差値が高い。普通の女性なら間違いなく嬌声をあげるだろうぐらいのがゴロゴロいる。しかし…

「イケメンなんざファックだクソッタレ。あたしはかーいいおにゃの子とおとこむすめしかヤれねーんだよ。」

…まぁ、楓は普通ではなかった。というより、ノンケではなかった。

「はぁ…まぁ趣味は人それぞれだし、何も言わないわ。」

マネジャーは嘆息し、バッグから一枚の写真を取り出す。それを手渡された楓は、少しの間を置いて口の端をつり上げる。

「本業、来たか。ちょうどいい。副業の方でストレスたまってんだ。受けるって伝えとけ。」

楓はそう言うと手に持った写真をちぎり捨てた。


炸裂音が倉庫内に繋がってひびく。同時に、個体と液体の混合物を叩きつけるような音、即ち死体が倒れる音。広がる光景は、一言で表現するなら…戦場いや、虐殺であった。

 「いいねぇ!!!これだよ!!こーいうのが正しくあたしのお仕事ってーもんだ!!」

その中を唯一笑顔で駆けるのは、ツインテールの少女、楓。

その手にあるのはベレッタM9。イタリア、ベレッタ社が開発し、アメリカ軍が制式採用したベストセラーハンドガンだ。

楓は倉庫内の遮蔽物から遮蔽物へ素早く移動し、火線になるべく身体を晒さないようにしている。その事に焦れた敵の一人がナイフを持って楓の隠れたコンテナに回り込んで来る。ナイフが自分に刺さる刹那、楓は相手の手首を狙って払い、首筋にゼロ距離から射撃した。先端を鉄で覆った9㎜弾は、その貫通力と殺傷力を発揮し、すみやかに相手の命を刈り取る。

「あと5人、ベレッタの弾は10発うってあと5発。燃えるなっ!!」

楓が形のよい唇についた返り血を舐めとる。なまじ顔がいいだけに一種独特のおぞましさがある。足元の今作ったばかりの死体を持ち上げ、それを盾に突っ込む。死体の肩越しにベレッタを構え、邪悪な笑みで、叫ぶ。

「皆サァーン!!!今日は殺されにきてくれてありがとおおー!!礼に鉛弾をおごってやるよぉーー!!」

 5発の、銃声、そのあとに動いていたのは、ただ独り。


戦い、いや虐殺の帰り、マネジャーの運転する車内から、海に向かってベレッタのバレルを投げる。線条痕は銃のバレルと照合して証拠になる、こうしておけば足はつかない。いつも通りに仕事を終え、楓はほぅと息を吐く、心なしか肌のつやがいい。末期のトリガーハッピーである。

「…そういや今回のやつらは何で殺すことになったんだ?」

楓の問いにマネジャーが怪訝な顔になる。

「何って…そんなこと知ってどうするの?というか珍しいわね、あなたがそんなこと聞くなんて。」

その反応に楓は大仰に肩をすくめて見せる。

「あたしだってなぁ、ただ他人に使われるだけの“銃”から抜け出したい時くらいあんだよ。」

その冗談めかした仕草にマネジャーはクスリと笑う

「よく言うわ、そんな充実した顔しといて。」

その返事に楓もマネジャーに笑いかける。

そう、楓は銃であり。弾丸だ、ただの凶器だ、凶器は自らが誰を殺すかなど考えない。考えなくてすむ。トリガーを絞り、殺したのは自分でも、こめられた殺意は自分の物ではない。という…言い訳…。

(無駄…だよなぁ、わたし、自分が狂ってること、知ってるし。)

そんなことを考え、楓は、少しだけ、寂しそうに笑った。


翌日、朝のニュースで、麻薬密売グループの壊滅が報じられた。現場からは9㎜の拳銃弾が発見され、警察は密売グループ間の抗争と見て捜査を進めていること、グループは強姦事件を起こしており、一人の少女が犠牲になっていたこと。その子は父と二人で暮らしていたことがニュースで読まれた。




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