第4章 真実を知った時
学校で授業前に教室に次の授業の担当じゃない先生が入ってきた時、結構焦ります。時間割変更忘れてたかなって。
森に入り込んでから一夜が過ぎた。
いかなる日であっても、明日は訪れる。
そして、朝が来る。
学校でクライスは森で借りてそのままだったギルの短剣を彼に返し、クラムと三人で昨日の話にふけっていた。
「昨日の探検の最後のクライスの魔法、あれはなんだったんだろうな?なんだかものすごい魔法だったけど」
「うん、自分でも分からないんだけど…。今日中にもお父さんかお母さんに聞いてみようと思うんだ」
「そうね、それがいいと思うわ。もしかしたらなにか隠していることがあるのかもしれないしね」
三人で会話していると、後ろから大柄の男性が近づいてきた。
「三人して、なんの話をしているんだ。もうすぐ授業が始まるってのに、まだ準備してないとかないだろうな?」
「げっ、教官!!」
彼はラギア教官。クロスボーラー界でも数少ない技術教官のうちの一人。<個性>は<罠師>、補助系である。彼の教育は非常に好評で教え子には優秀な人材が数多く名を連ねている。大空のような色をした髪が特徴的だ。
そんな教官が、いま目の前にたっているのだ。ついでにいうと、次の授業は国語で彼の担当ではない。
「ちょうどいい、お前らに話があるんだ。放課後職員室に来なさい」
『は、はい…』
黙って従うしかなさそうだった。
その日の学校では、何も起こらなかった。至って平和で、いつもと変わらない。そんな日だった。
そして放課後、彼らは職員室に向かった。
校舎建屋2階の一室。そこにある扉を開けると数人の教官がいたが、そこにラギア教官の姿はない。
と、後ろから不意に声がした。
「ちゃんと全員来たようだな」
『う、うわあああ!!』
全く予想だにしていなかった方向から聞こえたその声にパニックに陥る三人。ギルに至っては相当驚いたのか<一斉攻撃>を発動し、まわりに様々な方向を向いた何本ものナイフが浮かんでいる。
「おいおい落ち着け、俺だ」
そう言われ、恐る恐る振り返ると、声の主はラギア教官だった。しかし、そこにいたのは教官ではなく、教官の<個性>で生み出されたそっくりの人形だった。しかもスピーカーつき。本体、もとい実体はいなかったはずの職員室から出てきた。
「待っていたぞ、中に入れ」
『はい…』
三人は職員室の奥にある小会議室に通された。
四人だけにはあまりにも広すぎる部屋。その部屋に無数に存在するように感じられるほどの椅子のうちの並んだ三席に三人がついたのを見計らって、ラギア教官はたずねた。
「お前ら、昨日の放課後<試練の森>に入っただろう?」
『えっ!?(バレてる!?)』
バレた経緯はこうだ。
まず森の入り口にある熱探知機が三人分の熱量(正確には三体の動く熱源)を観測した。その知らせが学校に届き、数人の教官が捜索に出た。そして捜索過程で教官のうちの一人が、ゴブリンの一団と交戦中の三人を見つけ、他の教官が来るまでしばらく様子を見ていると、クライスが例の火炎魔法を発動したのだった。その後ほかの教官が到着。三人が村に帰っていくのを見届けてから教官たちは学校に戻り、校長に報告したのだった。
話のあと、ラギア教官は
「この際、不法侵入の方は無視するとして…」
『(無視すんのかい)』
「クライス、お前の<個性>は回復系のはずだが、なぜ攻撃系の呪文が使えたんだか、自分でわかるか?」
「えっ…?わかりませんけど…」
「なら、こっちにこい。他の二人はここで待っていろ」
『はい...』
「いくぞ、クライス」
「は、はい!」
クライスが連れていかれた部屋には、こう書かれた看板がかかっていた。
<来客室>
「開けて、入れ」
ラギア教官に促され、ドアを開けるとそこにはクライスの両親、スレイブとエミルがいた。
「お父さん!?お母さんも…。仕事はどうしたの!?」
「いまはそれどころじゃないからな。とりあえず、そこに座りなさい」
「うん…」
クライスを向かいに座らせた二人は、全てを語り始めた。
個性判定の日のこと、彼の<個性>は攻撃系の<魔術師>だということ、そして攻撃系は万能系と回復系の間には産まれないとされていること…
二人が全てを語り終えたとき、クライスはショックのあまり、二人を直視できなかった。今の今まで疑ったこともなかったのだ、一度にこんなに大量の真実を聞き、受け入れられるはずがないと言われればそうだ。そんな彼の様子を見て、スレイブたちは彼にこういった。
「まあ、受け入れられないだろうな。
「でも、あなたは私たちの子よ。そして、私たちはあなたを愛している。これだけは忘れないで」
「うん…ありがとう、お母さん。」
「今日はショックも大きいだろうし、家に帰るといい。教室に戻って帰る仕度をしてきなさい」
ラギア教官にそういわれたクライスは、一旦小会議室へと戻った。そこには心配した様子のギルとクラムがいた。二人は彼を見つけるとすぐにかけより、
「大丈夫か!?何があったんだ?」
「何でも話して、私たち友達でしょ?」
と代わる代わる声をかけてくれたが、いまの彼の心には響かない。
「ごめん、また明日ね」
元気なくそういって彼は会議室を去った。自分だけでは処理できないような絶望感を抱えて。
そして、未来への漠然とした不安を抱えて。
個性が結構出てきて自分でもややこしくなりそう(汗
時間があればまとめでも作ろうと思います