表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/100

第90話(「夢は終わりだ」)

 心をひとつに。

 あたしたちの願いを、どうか叶えて……!



 パアアッ……!



(……?)



 目を閉じていた あたしは、まぶたを開いた。強い光を感じたからだ。

 ゆっくりと、開ける。

「……!」

 眩しいかと思っていたら、眩しくない。

 なんて……なんて淡い光なの。

(色が……!)




 神秘を見た。




 淡いが、強いと感じさせる白っぽい、陽の光を全身に浴びたような みずみずしい葉緑の色。微かに黄色が混じり、そしてそれは段々と、赤にはならず白っぽくなっていった。

 まるで生命という名の、泉の底から湧き出た水の泡いっぱいの中に居るようだった。シャボン玉イリュージョンとも言える。ココは何処だっけと、自分の居場所を見失ってしまいそうになる……!

(千歳……くん……寿也……)

 光の泡に隠れて2人ともが見えない。何処? 近くに居るはずでしょ何処に居るのと。

 何の音も聞こえない。声も。耳が、使えなくなっているのかしら……?

(「真木……!」)

 電波にのって、寿也の声の気配がした。

(「寿也……!」)



 ココは何処。

 白い空間。

 何も無い。

 振り向けば。

「……寿也!」

 遠く彼方に、2人の人物が立って あたしを見ている。

 寿也と、隣に居るのは……千歳くんだ。「千歳くん!」

 あたしが そちらに手を伸ばす。こんなに離れてちゃ、届くわけが無いと知っていても。

 2人とも笑っていた。

 千歳くんはニッコリと。寿也は口元だけが。

 双子。

 あなたたちは、双子だった。

「消えないよね!? ……2人とも!」

 あたしの声は届いてる? 答えてよ!

 答えて! ……




「夢は終わりだ」




 ……


 ドクン。


 ハッ……!


 ……あたしの意識は返ってきた。心臓の音のおかげだ。

 一瞬。

 あたしは、夢を見ていたみたいだった。

「寿也……?」

 我に返ったあたしは、状況を見る。

 ココは確かに千歳くんが寝ている病室の。

 ……。

「……」

 置かれていたはずの、自分の両手を見た。しかし。

 さっきまでは その下に、千歳くんの体があったのだ。あったはずだ。

 しかし しかし。

 そんなバカな!


 ベッドの上には、誰も寝てはいなかった。


「いや……」

 あたしは小さく声に出した。

 いつの間にか泡も光も無かったんだけれど。

 そんな事どうでもよかった。



 居ない。



 誰が……?




「ちとせくんっ……!」



 嫌だ。



「 ち と せ く ん ーーっ ! 」





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ