第89話(頑張れ)
あたしの声は真さんたちに届いた。それは嬉しかった。
でも。
千歳くんの変化は止まっていない。こんなに寿也が頑張っているのに。
少しずつだけれど。少しずつ……緑色の淡い色の中で、千歳くんは。
『……ダメだよ……』
やはり願うだけじゃ意味が無いというの?
『……千歳くんは何も悪くないのに……!』
悪いのは誰? 何?
『……お願い たすけて……』
かみさま。
あたしの声を聞いて ……
……
……
『……リリン王女……』
?
知らない声がした。
さっきの人たちとも違う、若そうな女の人の声。
『本当に、私たちの星の王女なの……?』
疑うような、恐る恐るな声調だった。あたしはハッとして慌てて答えた。
『だ、誰っ!? う、ううんそれはいいの。えとその、はいっ。あたし正真正銘、本物王女ですっ。長い名前があるみたいでっ、ええと』
何だっけ?
『チョッチョビ……エキセントリックーぼん? アレ?』
あたしの記憶力には限界がある。
『チョッチョビーエセツクレアイリー=ユーク=トスボン=リリーガ……だ』
横から助言が。
余念が無いはずの、寿也だった。
ありがと寿也。こんな時にまで。
『本物……なのね。たぶん。本当に……ミルキーの誰かが、消えそうなのね?』
!
あたしはウンウン! と強く何度も頷いた。姿は相手に見えているわけでは無いんだけれど。
『本当です! 信じて!』
信じてもらうしか無かった。証明できる手立てが無いのが悔しい。
『そう……なら、協力するわ。とはいっても、念じればいいのかしら?』
『……! はいっ!!』
あたしに光が差したような気がした。
すると どうだろう。
次から次へと、違う方向から声が聞こえ出してきたのだ。
『うーん。まあ、念じるだけなら』
『痛くないよな、別に』
『大丈夫? 一体何があったのか知らないけど、頑張って!』
『頑張れよミルキーの誰か』
『しっかり! 応援してるですたい!』
『チトセっていうの? チトセくん、頑張れ!』
『 Chitose must hold out!』
『王女もしっかり! 弱気になっちゃいかんぜよ』
『ってゆーかぁ〜、マジ頑張れ〜』
『那个孩子是美的男孩子?』
『聞こえた聞こえた。とにかく頑張んな』
『アポピレピレパレ』
『頑張れ!』
『頑張れ!』
『頑張れ!』
『頑張れ!』
『頑張れ!』
『頑張れ!』
『当店では各種、全品2%還元で ご奉仕させて頂いておりまーす!』
『頑張れ!』
『頑張れ!』
『頑張れ!』
『頑張れ!』
負 け る な !
……
負けない。
祈りを、ひ と つ に……。