第88話(王女より)
『あたしはミルキー星から生き延びた、ミルキー星の王女!
王女、リリンと申ーす! 』
かなりキャラクターを作りあげている気がする。でも構うもんか。
こっちは人の命が かかっているんだ。 恥ずかしがっている場合じゃない!
やれ! やるんだ! あたしにしか出来ない事なんだから!
やっちまえーーーっ!!
……。
……続ける。
『どうか聞いてほしい、地球上のミルキーの者たちよ!
今、あたしの側に消えていきそうな命がある。頑張って持ちこたえている。
あたしは それを 助けたい。救いたい。
しかし ココに居る者だけの力だけでは 足りないのだ。
そこで!
あたしは、皆に協力を呼びかけたい。
どうか
今 この 消えそうな命のために
一つになって 祈りを捧げて 気合を込めて
エネルギーへと 変えて
あたしたちに
どうか あたしたちに ……
力を 分 け て く だ さ い っ ! ! 』 ……
あたしは目を閉じて意識を集中している。両手は、寿也の両手の上に。重ねて先生や他の皆の手が、そこにある。
何度目かも忘れたミルキー電波を発信しながら。
寿也の集中力は、あたし以上だ。あたしの通信は もちろん聞こえてはいると思うけれど反応は無い。見るからに余裕の無さは うかがえた。
寿也、頑張って。
あたしも頑張る。
何度でも呼びかけるんだ。
『お願いします。あたしは ……
何の力も技も無い、ミルキー星の王女。王女とは名ばかりの、普通のミルキー星人です。
どうか お願いします。この声の届いたミルキーの皆。
力を貸して。
祈りを下さい。
それがエネルギーとなります。なるのかどうか本当は謎だけど……。
あたしは 信じます! 』
届け、気持ち。
全世界のミルキー星人へ。
あたしは王女じゃなくてもいい。そんな事はどうだっていいの。
あたしは。
諦めたくないだけなの!
……
……
『……真木ちゃん? ……』
『……リリン王女!……』
『……チョッチョビーエセツクレアイリー=ユーク=トスボン=リリーガ、か』
『すごいね。本当にコレが王女の声なのかい?』
『可愛い声ね。フフ』
しばらくして聞こえた声たち。あたしは中に聞き覚えのある声を聞いた。
真さん、のどかさん、アルペンさんだ! それ以外は……ハテ?
『真さんたち! あたしの声が聞こえたのっ!!?』
あたしは飛び上がりそうなほどの歓声を上げた。嬉しくて嬉しくてたまらない。
あたしの声が届いたんだ!
真さんたちはオーストラリアに居るんだろうか?
『聞こえたよ! すごいな、発信、上手くなったね。国境を越えるなんて。そちらはどう? 志摩浪から事情は聞いてる。千歳くんは どんな様子だ』
と、真さんの頼もしい声が聞こえた。
『……』
あたしが無言で千歳くんの体を見る。顔を見る。
どんどん退化していっていた。赤ちゃんに近づいていっているのが確実だった。
また、鼻の奥がツンとして目から涙が出てきそうに。
『……千歳くんが消えちゃう……』
どうなってしまうのかが全然わからない。わかりたくも無かった。