第87話(奇跡とは)
祈る事はバカみたいな事なんだろうか。あたしは聞きたい。
今の あたしに出来る事って何だろうか。誰か教えられるもんなら教えて、あたしに。
所詮、いざって時には祈るしか出来ない。でも それだけが せめて、だ。
あたしは祈ろう。全身全霊を込めて。
『条件が合えば、同じ奇跡も起こる』
真さんの言葉。ならば条件を合わせよう。それが行動だ。
奇跡とは、結果だ。
「千歳くん……!」
あたしも、寿也の両手の上に重ねて両手を置いた。
その上に、先生の手も。
そして、志摩浪さんも、その場に居た他の人たちも。
千歳くんの周りは生還を祈り願う人でいっぱいだ。何て幸せなの、千歳くん。あなたの事を大事に思ってくれる人が。他人でも。こんなに居るのよ。
だから かえって来て。奇跡を見せて。
緑色の淡い光で包まれる、あたしたち。
熱を肌で感じないけれど、温かいと思った。こんなに温かいと思った事は無い。きっと無い。
なのに……。
「くっ……」
寿也が、少し苦しそうな声を出した。「寿也っ……」
寿也の体力も限界を超えていた。
無理も無い。千歳くんを救うために、車に居た時からずっとどれだけの長い時間、気を集中させ それを持続させるために また集中させ……。
寿也も限界だ。限界を超えているんだ。
でも、止めるわけにはいかない。止めてしまったら千歳くんは、もう……。
あたしが。
あたしが出来る事は本当に何も無いの?
あたしはミルキー星人で、女の子で……。
あ。
そうだ。
一つ、思い出した。
「あたし、王女だ」
たった それだけの事だけれど。
「あたしは王女……」
あたしは意識を集中する。神経を研ぎ覚ます。
静かに行動に出る。
あたしに出来る事。
……ミルキー電波、王女バージョンだ!!
『 地 球 上 の ミ ル キ ー に 告 ぐ ! 』
……。
……あたしはノリとテンションに身を任せた。