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第80話(危険)

 きゃあシビレるぅ、と興奮している千歳くんは ともかくとして。あたしたちは帰る事にした。そもそも、あたしたちがココに居る意味は無い。ただの来実さんの付き添いなんだから。


 ヒロチンは怒鳴る。

「第一、年の差がありすぎだっちゅうの! もっとこのオネエサンみたいになってから来いやぁ。しかし捨てられただの遊びだの、人聞き悪いっちゅうねん! ちょっとナンパして遊びに車で連れ回しただけじゃいっ」


 いやそれは立派な未成年者 誘拐未遂事件では。真実も人聞き悪いんですけど。

 あたしは仏のような悟りの顔をして「……行こ、2人とも」と寿也と千歳くんの背中を押して促した。

「ま、話し合えば解決するという事で。めでたしめでたし」

 寿也が言った後 雑居ビルを出たすぐ。


 ガシャーン!


 ガラスが割れた音。そして。


「きゃあ〜」


と、音が事務所からしている。

 ただし、悲鳴はヒロチンの声だった。


 無事を祈ろう。あたしたちは過去を振り返らない。


 ……と カッコつけてみた時に、来た道を辿って帰路を進んで行くと。千歳くんが寿也に尋ねた。

「寿は、オーストラリアに行くの? 真木さんと一緒に」


 あたし、ドキっとして緊張する。今まで あまり触れなかった事だったからだ。


「行かない」


 キッパリと寿也は言った。続けて、

「僕は子供だし、父さんと母さんが居るから、置いては行かれない」

と……。


 ……あたしは立ち止まった。「……」

 合わせて、2人とも立ち止まる。あたしの顔より、千歳くんは寿也の顔を見た。

 少し笑って。……笑って?


「寿は幸せなんだね」


 今度は、ニッコリと笑いかけた。

 あたしは それに違和感というか……異質か不気味とも言える嫌な感じがした。

「千歳……?」

 寿也が呟き眉をひそめた時だった。

 あたしたちの横のガードレール越しの狭い道路を、一台のパトカーが通りかかった。何処かの事故現場に向かおうとしているのか騒がしく抜けていった。

 危険な色が目に付く。これはいつか感じた気配と似ている。


 そう……寿也とタイムスリップして蝶子さんの車に乗っていた時と同じ感覚だ。

 危険。

 あたしの中に広がる。


 千歳くんは笑いながら発した。


「俺は母さんにとって い ら な い 子だった。シャンプーを飲んで不用になった、寿の一部だ」


 あははは……


 楽しげに。……楽しげに。

「千歳!」

「千歳くん!?」

 あたしたちが声を揃えて叫ぶ。だって。



 千歳くんはピタリと笑うのを止め、崩れ倒れてしまったからだ。




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