第8話(初めての『ミルキー電波』)
眠りながら確認しておくよ。
あたしはミルキー星人で……寿也も、ミルキー星人だったんだね……?
あたしは、ミルキー星人の事をあまり知らない。自分が何故、地球に一人で居たのかも。
教師・岩生もとい先生は人間だ。もちろん知らない。ただ先生は、地球に不特定多数のミルキー星人が居る事を知っていて、それを黙って受け入れている。
自分で作ったお弁当を忘れていくような、身寄りの無い しかも宇宙人の子供を結局引き取って育ててしまうような、そんな人間。
自分が何者かなんて、知らなくてもいいのかもしれない。だってあたしは人間と変わらない、何の力も無い生物。
でも寿也は。
寿也の事が知りたい。
あたしの事なんかよりも。
きっと、これが「好き」になる一歩手前。
あたしは寿也を好きになる。そう確信した。
確認終わり。
(「……聞こえるか、真木」)
真っ黒な空間の中で、声が光のように感じた。すぐに声の主は寿也だとわかった。でも。
(「……寿也ね。初めてあたしの名前、呼んだ」)
クスクス、と笑ってみせた。体を動かせている実感は無い。なるほど、ただの感情のみの世界じゃないか、コレは。ココは。
続けよう。
(「ミルキー電波は、受信初めて?」)
(「そうだよ。……そんな名前なんだ、コレ。普通にしゃべっている感覚がする……」)
(「不慣れなら、そう長くは続けられないな。お前がスッキリできるように、一つだけ言っておく」)
(「……何」)
(「僕は、嘘はつかない」)
あたしは思いっきり叫んだ。(「嘘だああああああ!!」)
(「やかましいな。僕が嘘を言った事があったか」)
ええ何度でも! あたしは身を乗り出す思いで寿也に反発した。
(「あんたのおかげで黒板に相合傘書かれちゃったり……ええと、そうだ。 おまわりさんに いつぞや道端で尋問受けた時だって……誰が太陽光線浴びたら灰になるって? ヴァンパイアか、あたしは!」)
(「僕は真木と付き合ってると言った覚えは無い。それに、灰うんぬんはただのジョーク。通じたろ、笑ってたじゃないか、おまわりさん。嘘は悪意、ジョークはユーモアと ここでは解釈して頂きたいかと」)
(「カイシャク? アクイとユーモア?? ああもう、難しいよ! あんたもっと小学生らしくしなさいよぉ!」)
ところが、そこで寿也の声はプッツリ途絶えてしまった。
何だろう、頭が重くなってきた。
とりあえず、眠って休もう。
……
確かに、寿也の言った通り。寿也は「僕の連れ」と言って指を立てただけで、一言も付き合ってやるとか彼女なんだとかは言っていない。言ってはいないけど……ふーむ……。
いや、完璧 誤解されるって。
絶対、屁理屈だ。あたしの中で「寿也嘘つき説」は消えない。消してなるものか。
ん? 仮に本当に寿也の言葉が真実だとするならば……。
チンピラたちとの出会いは、全て本当にあったという事なの。
(「正解!」)
何処かで、正解のランプが聞こえ響いた。




