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第78話(とっさん)

「ふうん。それでついて行くわけ。ご苦労さん」

 途中の自販機で栄養かもしれないドリンクを買った寿也は飲みながら、あたしたちを冷ややかに見た。

「だって何だか断る隙が無いんだもん」

「別に暇だしいいと思ってさぁ」

と、あたしたちが次々に言い訳をした所で。寿也が何かに気がついたように千歳くんを見つめた。


 3人、来実さんの2・3メートル後ろで横並びになって歩いていたんだけれど……端の寿也に見つめられ、その隣の千歳くんは綺麗な瞳をさらに輝かせて寿也を見返した。

「見つめられたら溶けちゃう。もっと見つめて」

 うげ、とあたしは千歳くんの発言に反応。いい加減、寿也離れでもしてくんないだろうか。


「千歳、顔色悪い。どうした」

 寿也が真面目に聞いた。

 千歳くんの顔が少し引き締まる。あたしは「え?」と千歳くんの顔色を見るんだけれど。

 特に分からなかった。

「あ、寿。来実さんが建物に入ってったよ」

 いきなり、千歳くんは前行く来実さんを指さした。


 来実さんは、古い雑居ビルの中へと抵抗無く入って行く。

「あそこなわけ?」

「たぶん」

 表の上の階の壁に、道に突き出すように看板がつけられ、そこには こう名前が書いてあった。



 本間事務所



「……『ヤ』?」

 聞いてきたのは寿也だ。「や、って何?」あたしが聞いても、寿也は素直に答えてくれない。

「組、という名がつくが幼稚園では無い騒がしい所」



 寿也の謎かけに答えを見つけ出したのは、あたしたちが来実さんの後を追って事務所のドアを開けた時だ。ドアを来実さんが開けた瞬間、煙草のニオイが襲いかかってくる。

 あたしたちは少し身を引く。

 しかし、来実さんは平気そうに第一声を叫んだ。


「ヒロシを出しぃ! 話があるんや!」


 ……。

 中の様子を説明しよう。

 あたしは来実さんの陰からコソッと中を覗き見る。

 オフィス机が向かい合わせに並んでいて、本や書類が机の上に積まれていたり無作為に置かれていたりといったさまが見られた。

 しかし。

 中に居る人間は……何処にでも居そうなサラリーマンやOLでは……無い。


 怖いとも面白いとも歪んでいるとでも言ってしまえそうな顔をした……チンピラーズ数人。そして一人、キャバ・クラ嬢子のような女の人が居た。あくまでも容姿の上での見解だ。

「ヒロシの何なの、アンタたち」

 煙草を机の上の灰皿に押し付けながら、キャバ子は言った。


「来実ぃ、もう来るなって言ったやんけえ」


 キャバ子の横に居た男が声を上げた。

 あたしは来実さんの顔をチラっと見ると、固い真剣な顔で来実さんは叫んだ。

「あたしとは遊びやったんかあぁ! その女、誰やねん!」

 キャバ子を指さしている。

 もう一度しつこいけれど、中学生だよねえ。


「お前には関係ないやろうが。しつこいゆうんなら手段を……ん?」


 白いスーツを着て丸い大きめの古いメガネをかけている その男。メガネをクイと持ち上げたついでに、来実さんの後ろに居たあたしたちを見たようだ。

 そうしたら。

 男は いきなり、身が固まって信じられないといった顔にみるみる変化していった。



「と……とっさん!!」



 ……とっさんって誰。





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