第76話(いらない子)
結局、千歳は母を見失い。そして今に至る。
「母はミルキー星に帰りたかった。でも自分はもう長くない。だから、俺らに託した。ミルキー星へ帰れ、と……」
あたしたちが?
ミルキー星に?
「母さんの故郷だ」
子犬を抱っこしている千歳くんの顔をあたしは横から見つめる。何処を見ているんだろう、そんな事を思いながら。
「寿じゃなくて、俺を選んだ……何故か、って……考えた」
あたしたちは公園前にさしかかる。草野球ができそうなくらいの面積はある公園を取り囲むように木が植えられているが、葉は ついてはいなかった。
木が植えられている横の歩道を歩きながら、千歳くんの話を黙って聞いていた。
「アルペンさんの話を聞いていて ひょっとして俺って……って……」
あたしは、千歳くんの様子に違和感を少し感じる。何処か、追い詰められているような。
千歳くん……?
「きっと俺は……」
次を言い出そうとした時だった。
「ウワアアァァアアンッ! きっとあたしは いらない子なんやあああ〜っ!!」
公園の中の方から声が聞こえた。「!?」
あたしと千歳くんは、もちろん公園内へ注目する。
見ると、滑り台の てっぺんに立ち、泣き叫んでいる女の子が居た。脇目も振らず空の方に向かって思いつくままを叫んでいるように見える。
しかしその内容が……。
「ヒロシのドアホォォオ〜!」や「捨てんといてやああ〜!」など。
女の子はどう見てもまだ中学生なんですけれど。
セーラー服姿の女の子。何があったんだろうか……。
あたしと千歳くんは公園に入って近づいて下から聞いてあげた。
「お姉さん、どうしたの」
すると千歳くんの顔を見下ろして、また涙目で叫んだその女の子。
「男に捨てられたんやぁぁあ〜!」
……はぁ、そうなんですか。