第73話(開発)
『恒星トリートメント』……?
何に効くんだろうか。何をしてくれるんだろう?
「『惑星シャンプー』は不用なもの必要ないものを取り除き、『衛星リンス』はその後をカバーしてくれるようにできている。この『恒星トリートメント』はリンスとは違い、シャンプーの後に傷ついたりした部分に入り込み栄養を与えてくれる」
ええと……つまり、リンスの代わり?
「将来、毛生え薬としても開発を考えているが……」
と、アルペンさんがボソリと言った途端。
その場に居たあたしたちの視線が、アルペンさんの頭に集まった。
アルペンさんの頭には髪の毛一本も容赦なく無い。
「何だ皆。何処を見ている?」
あたしたちは「いいえ」と手や頭を振った。気にせず、話を続けるアルペンさん。
「普通に洗髪として使用する分には、問題は無いと思う。リリン王女のような特別な場合の服用は……どうなっても私は、知らない。保障はしない」
「まぁ仕方無いさ。ご苦労様、アルペン。ついでのソレ、大変興味深いものを持ってきてくれてありがとう」
真さんが素直にお礼を言うと「いや、何」と言いながら出した物を次々とスーツケースにしまっていった。
「さてと。用が済んだので、私は帰る。タイムマシンで」
しまい終えたスーツケースを持って、スックと立ち上がろうとしたアルペンさんを、真さんが制した。
「アルペン! せっかく来たんだ、一日ゆっくりして行かないか!」
アルペンさんの片腕を掴んで、ヘラヘラというかニコニコ顔で笑いかける真さん。
んん?
すぐにアルペンさんの怒号が飛んだ。
「ばっか野郎! 遊んでいるヒマがあるか! お前とのどかの首根っこ捕まえて、とっとと帰るつもりで来たんだ! 早く帰って仕事し……」
と、そこまで言いかけた所で。
不気味な沈黙が降りた。
あたしたちはゴクリと唾を飲み込む。
「まさか真……タイムマシンの燃料がもう……無い、なんて、はず……ないよなあ?」
アルペンさんは真さんを……薄笑いで見下ろしている。
あたしの目の錯覚だろうか。地と空気が震えているような。
彼を中心に。大気が、時空が、乱流が。
いやーーーっ!!
あたしの心の叫びと共に、今までで一番の大音量の声が鳴り響いた。
「 バ カ 野 郎 が ッ ッ ! ! 」