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第71話(もう一つの名前)

 アルペンさんの鼻の上にガーゼが貼り付けられ、鼻からの出血を止めるために鼻栓をされた。

 あたしと先生の家に帰って来て のどかさんに手当てを受けた後。アルペンさんは両腕を組み あぐらをかいて どっかりと座ったまま、静かにしていた。

 ただ……顔が鬼のように強張っている。シワの数を数えるのに一苦労しそうだ。

「あの……お茶です どうぞ」

 あたしが怖々と湯気立つお茶の入った湯のみをアルペンさんの前に置いた。

「ありがとう」

 ビクゥッ!

 あたしは丸いお盆を持ったまま、背筋をピンと伸ばした。口がカ○ーパンマンのようにフニャフニャと震えている。顔についているタテ線は いつまで経っても消えない。ずっと青ざめたまんまだった。

「そんなに怖がる事は無いだろうが」

 アルペンさんが あたしを見る。あたしはサササササと後ろに下がった。

 そのせいで、真さんにぶつかる。

「おっと……ア〜ルペン。優しく優し〜く。真木ちゃんは、王女様なんだからね」

 ニッコリ笑う真さん。ああ何だか癒される。

「噂のリリン王女か。もう一つの名前は何という」アルペンさんが尋ねた。


 もう一つって?

 あたしは何の事やらと、首を傾げた。するとコタツでテレビを観ていた寿也が言った。



「チョッチョビーエセツクレアイリー=ユーク=トスボン=リリーガ」



 ……。

 ええと……。

 あたしや真さんの体が固まっていると、アルペンさんが繰り返した。

「チョッチョビーエセツクレアイリー=ユーク=トスボン=リリーガ、だな。わかった」


 わかったんですか!?


 あたしはヨロヨロ〜と よろめきながら、台所の方へ戻った。すると、ちょうどトイレから出てきた千歳くんと軽くぶつかった。「わっと。大丈夫 真木さん? 顔色悪いよ」

 あたしの額に千歳くんの手が触る。「熱は無いみたいだけど」

「平気……平気よお〜」

 あたしはアルプスの少女みたく、アハハハハハ……とお花畑を駆けるように。でも狭いので気分だけで。千歳くんの前を抜けて行った。


 イッちゃったあたしは ひとまず。先に説明をしておくと。


 現代に戻ってきた あたしたちは、出発時と同じ湾の港へ着陸した。ただし、早朝。

 卒倒した あたしを真さんが背負い、タイムマシンの機体は湾の底へ沈めて隠して。家へと戻った。

 あたしたちを、先生たちが温かく出迎えてくれた。

 あたしたちと共に居た、顔面血だらけのアルペンさんを見て先生たちは最初、「な、なまはげっ」と叫び驚いた。きっと鬼の事を言いたかったんだろうと思う。


 あたしたちは それぞれ用を済ませて座る。

 そういえばアルペンさんは、何をしにココへ来たんだっけ?

 会ってから今まで。今も。

 アルペンさんの般若みたいな恐ろしい顔は、崩れる事は無かった。





【あとがき】

 長い名前の公表。分かる人には分かる話で。

 作者、記憶不可能。



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