表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/100

第7話(お付き合い)

 「この後、待ち合わせている。ちょっとついて来い」


 ……何だ。かなりびっくりした。本当に、お付き合いが始まるのかと思った。

 こんなあたしの顔なんて放っておいて、寿也くんはチャッチャカ続けた。

「頭数でも、あった方がマシだろ」

 ……頭数って?

「ちょっとした抗争に巻き込まれている」


 そういえば、あたしって寿也くんの事が好きだったっけ? 大事な所を忘れて抜け落ちている気がする。



「この前、風俗街をたまたま歩いていたら」

 たまたま歩くような所じゃないと思うんだけど。まあいいや。

「一人のチンピラと出会った」

 出会いは、いつも突然。

「裏通りで、ボコボコにされて気を失っていたそのチン・ピーラ。僕は かわいそうになって、ケガの手当てをしてやった」

 ああそんな出会いを……に、自ら関わりに行っているではないか。

「そうして、友達になって。ボコボコにされた理由を聞いたら……」

 大人と、小学生だよね?

「金のシャチホコを敵対している組員に盗られたんだって」

 何その名前がウサン臭いブツ。

「敵対している組の奴らを呼び出した。何人来るかは知らないが、これから行く」

 何処に!

「背犬川のほとり」

 ……川が赤色に染まる!


「何で あたしもそれに付き合わなきゃなんないの! 冗談じゃないわよ! まだあたし死にたくないわよ!?」

 あたしが抵抗すると、寿也はフッと笑う。ああもう呼び捨てだ! まあいいや!

「良かったじゃんか。死にたくなくて」

 何言ってんだろう。意味わかんない!

「とにかく、あたし帰るから。抗争でも戦争でも、好きにしたら!」

 あたしはプンスカ怒って帰った。

 どうせ寿也の嘘。ホラ。でたらめに決まっている。信じるわけが無い……。



 ……なんだけど。

 あたしは、いったん家に帰ってランドセルを置いた後、背犬川へ出かけてしまった。

 どうせ寿也の嘘で、騙されていたとしても。それならそれでいいと思った。

 寿也の事が……心配だった。


 好き……なのか、なぁ……まだ、そこまでには達していないよね、と思うのだけれど。人として、心配したり気にするのは普通よね? ……

 なんて考えた後。ドキンとした。


 人として。

 でも、あたしは……。


 ……


 ……背犬川が見えてきた。まだ川の近くは よく見えない。歩いていくうちに、段々と状況が明らかになってくる。

 大橋の架かった背犬川。川幅はソコソコ広いが、水深は思ったより浅い。天候良ければ、ヒザまでくらいしか水面は届かない。ゴツゴツした大きめの石が転がっていて、堀になっている。そこを下って、大橋の下へ出て近づいた。


 立っているのは寿也一人。

 寿也を中心に、周りにはチンピラ風の男たちが倒れて……いた。

 川もチンピラたちも、赤色一滴 染まっていない。

 寿也の両手には、金のシャチホコが。


 さて、問題です。第一問。

 この状況を、説明して下さい。

「やっつけたぞ。僕一人で」寿也は涼しい顔で言った。「安心しろ。みねうちだ」

 お願いだから真面目な顔でサラッと嘘を言わないでくれないかな。何処に刀があるのよ。

「ココ」

 寿也は、金のシャチホコを地面に置いた。そして右手だけを少し高めに掲げ、目をつぶって精神集中をはかると……。

 光輝く棒が手に現れた。例えると……。


「……蛍光灯?」「ま、似てるか。ミルキー棒」


 頭の中が麻痺しそう。いや、してる。

 もうダメ、寿也には ついていけない。


 あたしは卒倒した。もうダメ、現実ダメ……夢に行かせて。

 あたしが夢の中へと走り出す前に、寿也の声が聞こえた。


「僕が そんじょそこらのミルキー星人と同じだと思うなよ」



 ……末恐ろしいこの子供。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ